色の専門家・草木裕子の色どりメッセージ (12)
8月になると、子どもの頃の夏休みを想い出します。
京都の夏は本当に蒸し暑く、様々な涼を感じる工夫がなされてきました。
そのひとつに、町屋の路地や庭先の〝打ち水〞がありますが、水の冷たさそのものだけでなく、色にも関係がありそうです。
色の心理的効果で涼しく感じる色は寒色系(ブルー系)ですが、明度が下がる(暗くなる)ことでも冷たさや涼しさを感じます。
陽が当たる所は暖かさや暑さを感じ、陰の部分では寒さや冷たさを感じることに繋がっています。
打ち水によって石や土に水が含まれると色の明度が下がり、そのものの色が暗く(黒に近く)なることで、涼しさを感じると言えますね。
実際に打ち水の効果はマイナス2〜3度だそうですが、心理的効果の寒色系を使うことでも、体感温度はマイナス3度程度と言われています。
水の効果と視覚からの色彩効果でより涼を醸し出しているのでしょう。
庭の手水鉢も水が溜まっているだけでなく、溢れ出して全体が濡れ色になっている方が涼しそうに見えるのもこのためですね。
まだまだ続く夏の暑さを乗り切るために、こうした色の心理的効果を利用してみましょう。
インテリアに使う小物や部屋着などは寒色系や明度の低い色が良いですね。
寒色系と言うとブルー系を思い浮かべますが、実はそれぞれの色相には青みよりの表情を持つ色があります。
例えばピンクでも少し青みのあるもので、桃色よりも撫子色、グリーンも青竹のような青緑色、黄色はオレンジ系よりもレモンイエローにするなどです。
そして、陽射しを遮る曇り空を連想するグレイッシュな色もお勧めです。
はっきりとした鮮やかな色はより暑く感じるので、夏の間は、少し鈍い色が涼しさを運んでくれます。
このように何色が良いのか?だけではなく、色の明るさや鮮やかさの違いでも、快適に過ごす材料になります。
ぜひ、クッションカバーやタオルの色だけでも変えてみてくださいね。