災いから身を守り、生きる力を培ってきた祇園祭の赤。

災いから身を守り、生きる力を培ってきた祇園祭の赤。

色の専門家・草木裕子の色どりメッセージ (23)

本格的な夏がやって来ました。
私が暮らしている京都は、他の地域からいらっしゃる方々に、本当に京都は暑いですね、と必ず言われます。

このような時季は涼しげなブルー系の色を求めたくなりますが、京都の夏は八坂神社の祇園祭の赤に包まれるのです。
その起源は平安時代にさかのぼり、鴨川の水害による疫病の流行を鎮めるために始まったのです。

赤は、色の世界では力強さや情熱などで表しますが、私は「生きる」というキーワードも大切にしています。
だから祇園祭の赤は、疫病から人々を守り、生き延びるための色だったのでしょう。

では、なぜ赤が「生きる」を表すのか? 赤を代表する基本的連想(誰もが連想するもの)の中に血があり、私たちの身体の中に赤い血が流れているから生きている、に繋がるのです。
そして、その血が作用して、何かに熱中すると顔が赤くなることが「熱血」という言葉を生み出したのでしょう。

また、赤を代表する連想の火(熱源)からくる熱さでも、人の身体はあたたまり、血液の循環が良くなり、肌が赤くなります。これは、すべて生きている証なのです。

血の繋がりという言葉をよく使いますが、そこから赤は「継承」との意味にもなります。
日本の染色の中で茜がありますが、それは赤い根っこを使って赤に染めたことから、赤根=茜になったと言われています。

根があれば、どんどん子孫繁栄に繋がりますね。

祇園祭では山鉾巡行の時に使われる「前掛け」や「見送り」という装飾品があります。
これらは400年前の南蛮渡来によって中国大陸を経て日本に来た絨毯やタペストリーが始まりです。
それらの赤は紅花や臙脂虫で染められたもので、現在も受け継がれています。

月読尊を祀る月鉾の前掛けや北観音山の見送りは見事です。

何百年も前から、京都の夏は祇園祭の赤に包まれ、町の人々はそれを見て、災いから身を守り、生きる力を培っていたのでしょうね。

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