料理の発想の源泉 ~枠を外す~

料理の発想の源泉 ~枠を外す~

食アドバイザー 田口三江子が語る気づき発見コラム 常食への旅

No.6:料理の発想の源泉 ~枠を外す~


33歳で 「食」のフリーランスになってから3年間、仕事らしい仕事はなく、夫に生活を支えてもらいました。

その頃は仕事のプレゼンの方法も知らず、そもそもフリーランスとは何なのかも分からず、ただ毎日が過ぎていきました。
それでも、じっとしていることは苦手で、ご縁を頂いた人をたどって、色々な人に会わせていただくのが日課のようになっていました。

当時、ひょんなきっかけで日本文化である「室礼(しつらい)」を知りました。
そしてその根底にある季節感や人への思いを、誰の中にもある太古の記憶に呼びかけるような「プリミティブな料理」で表現したら面白いのではないかと思い、サークルをつくって「室礼の空間で、おいしいものを食べながら文化交流-大人の社交場」というコンセプトのイベントを企画するようになりました。
最初は自宅で10人ほどの集まりからはじまったその室礼イベントも、人から人に伝わり、3回目には50人ほどの会になりました。
会場は、都内のダイニングレストランを貸切で使わせてもらい、「原始おでん(ほら貝や大根まるごと1本のおでん)」や、「野草の胡麻和え」、五穀米を、ワイルドに盛り付けた牛肉のたたきと共に召し上がって頂く「お包み」など、野趣溢れる料理を作らせて頂きました。

「豊穣の祈りと食 ―水口まつり―」と名付けられたイベントは、当時さまざまな芸術家や有名な映画制作をしている方々などがかけつけてくれました。

仕事が なかったために生活は大変でしたが、今思えば、この時遊ばせてもらったことが貴重な経験となり、今でも料理の発想の源泉になっているような気がします。

「こうしなければならない」「こういうものである」という枠をいったん外して、自然の理に適っていると思われる方法で料理を再構築してみる。
すると、古くて新しいものが生まれる。
そんなことを肌感覚で掴んでいったのです。

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