色の専門家・草木裕子の色どりメッセージ (19)
山間部や北の地方では雪解けの季節がやって来ました。
春の足音を感じると心も軽やかになります。
自然界の生物たちが目覚めるように、私たち人間も、とても前向きな気持ちになりますね。
雪の色は白。その雪が解けると透明の水になりますが、これはなぜなのか?と考えたことがあり、色彩の意味から読み解いてみることにしました。
雪景色では一面が白で覆われていて、たくさんのものを隠して見えなくしてしまいます。何も見えなくするという意味だと黒を思い浮かべますが、実は白にも同じことが言えるのです。雪だけでなく、白い霧、雲、などもです。
自然の中では、景色を覆う色というと、無彩色のものばかりです。光が無い闇(夜)の黒、灰色や白の雲、白い雪。
そして、その全てが姿を潜め光が射すと様々な色が顔を表します。
雪の下から芽吹くフキノトウのやさしい黄緑色などは、まさにその瞬間をとらえているように感じます。
白に光が射す、光の色はクリアー、だから白い雪が解けると透明の水になるのではないでしょうか。
そして、世の中の様々な色どりを私たちに贈ってくれるのです。
以前、冬の北海道を訪れた時、流氷に覆われたオホーツク海、摩周湖や阿寒湖も凍っていて、あたり一面がまっ白でした。
まさに色が無い世界を感じ、普段これほど雪や氷に囲まれた暮らしをしていない私には、とても不思議な感覚になり、いつの間にか色を求めている自分がいました。
お天気が良くなって見える青空にほっとしたり、黒や白のセーターよりもピンクを一番着ていたこと思い出します。
人は色の中で生きているのが自然なのだとあらためて感じました。
でも、この氷や雪にあたたかい陽が射すと白い世界の雪や氷は解け、クリアーな水になり、湖を満たします。
そして、山々を覆う緑や花の色、青い空、雲の色、太陽の姿を映し出し、水面が色とりどりのキャンバスになります。
色が無い世界から色どり豊かな世界に…自然に心が弾みます。