色の専門家・草木裕子の色どりメッセージ (15)
今年の夏の終わりに、イタリアへ行って来ました。
今回の旅のテーマは、ルネッサンス芸術と二千年前の遺跡です。
絵画は日本でも展覧会で見ることができますが、遺跡は現地に足を運ばないと観ることができません。
そこで、ナポリから近いポンペイ遺跡を訪ねました。
紀元後79年にヴェスヴィオ火山の噴火により、火砕流に埋もれた街が今も残っています。
灰に埋もれた状態であったため、保存状態が良く、二千年前の様子がわかるのです。その中で、秘儀荘と呼ばれる建物の壁画「ディオニゾスの秘儀」のレッドが、色彩に携わる私にとっては興味津々でした。
ポンペイレッドとして有名な色ですが、
実は諸説あるようです。高価な鉛丹などの鉱物の赤、安価な赤、火山のガスによって黄色が変色した赤、などです。
真相は定かではありませんが、この赤を見ると、人々の生きている姿を感じました。
「ディオニゾスの秘儀」とは、花嫁の子孫繁栄を願ってのストーリーが描かれていると言われています。
生命の誕生や継承の赤なのでしょう。
そして背景のレッドにより、二千年経った今でも、そこに描かれている人物が動き出しそうな生命力が伝わってきます。
宗教画で描かれるキリストの着衣に赤が多いのも、犠牲のために流した血の色で、キリストの復活ストーリーへと続きます。
日本では、子どもたちに人気の戦隊もののヒーローのリーダーが赤ですね。これが誰にとっても当たり前のように受け入れられるのは、そのエネルギーの強さや人を引っ張る力が赤と繋がるからですね。
赤の意味の基本的連想が血や火であることが、そのベースとなっています。
血は生きていることを表す生命力、火は全てを焼き尽くす強さを表すからです。
そのようなイメージの人はきっと情熱的で、何に対しても真正面から立ち向かう熱い人でしょう。
そして一番であることがモチベーションになるタイプだと思います。
多くの人の憧れの的になる赤レンジャーですね。