カエルの子

カエルの子

昨年夏の娘の質問。「お父さん、転職して良かった?」

こんにちは。お元気でいらっしゃいますか?

三月。卒業、転勤、転職、退職など、ライフステージが変わる人生の新陳代謝の時節。馴染んだ何かを手放し、新たな何かを受け入れ、また、新しい成長、成熟が始まる、不安と期待が入り混じる月。

そういえば、昨年の夏頃に、京都で働く一人娘にこんな相談をされました。

「お父さん、私、今の会社とても好きだし、いい人ばかりだし、待遇も業界の中ではいい方だし、何も不満はないんだけど、このままじゃそれに満足し切って、自分がダメになっていくような感じがするの・・・。だから、タイミングがきたら転職を考えているんだけど、お父さんは何回か転職して今の会社やっているでしょ。転職して良かった?」

ちなみに、彼女は東京の大学を卒業後、京都で60年の伝統を持つ建築系の出版社に入っていました。
そしてそこで、企画、編集、営業など様々な仕事を経験させてもらっていました。

親も感心するほど人好きで、いいと思うことを物怖じせず提案するタイプなので、会社のトップからスタッフの方々、担当の書店さんなどからも結構気に入られているみたいでした。
京都の街にもすっかり溶け込み、毎日をとても楽しんでいました。

そんな恵まれた状況、環境にありながら、娘が2年足らずで転職の話を切り出すのは、ちょっと意外でした。

私が「お父さんの時代は転職は脱落者的なイメージがあって、かなり勇気がいったなぁ~。
それでも29歳で起業するまでに4回も転職したで。

最初の就職はシマノ工業。今でこそ自転車部品や釣り具でトップの優良企業。
そこで生産管理を任されて、製造現場のガンコ職人のようなオッチャン達にいかに納期通りに完成品をあげてもらえるかが課題だった。

そこで役立ったのが、お父さんが高校でピッチャーやってたことやったなぁ。
オッチャンらは会社の野球チームにいたから、お父さんも入部して一緒に練習し、一緒のお風呂に入って仕事するようになったのが大きかった。

試合もお父さんが結構活躍したから、『哲(テツ)のおかげで勝てたわぁ。ありがとう』と言ってくれ、そんなオッチャン連中がお父さんの仕事がうまくいくように助けてくれた。

結局ベタな人間関係が大事な事がよくわかったし、野球という芸が身を助けてくれたんだなぁと実感したわ」と話すと、父親から初めて聞く話に娘は目をキョトンとしつつ、楽しそうに聞いてくれていました。

「2つ目は、ライオンズマンションの大京。お父さんはマンション用地を取得する部署にいて、気配りができて、楽しそうにエネルギッシュに仕事をする上司がいた。

いい案件がその人の所にどんどん集まる。こんな人になりたいなぁと憧れたものやわ。
当時は強烈な営業方針で問題も多い起業だったけど、清濁併せ呑む力もついたかもね

あとその会社の文化で良かったことは、朝礼で福沢諭吉翁の心訓を皆で唱えていたこと。

『一つ、世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つ事です』
『一つ、世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です』。

今でも心の中に残っているフレーズが自分の仕事観の一つになっている気がするなぁ~」。

高校・大学、4つの職場…。
語っているうちに、点が線になり、すべてが繋がっているような不思議な感覚に。

そんなことを懐かしく語っているうちに、私の中で点が線になり、すべてが繋がっているような不思議な感覚になってきました。

「お父さん、それで次は?」

真剣な表情の娘に、「3つ目はキヤ ノン販売。コピー機の直販で一日100件近くのお店や会社に飛び込む毎日。

大学のアメフトで培った体力、気力が生かされた。

スポーツで鍛えた直感力や状況判断力、粘り強さを駆使して、街の商店、下町の中小企業、オフィス街の上場企業まで様々な所に飛び込み、先方が喜び役に立つことを想像し、いいおせっかいを焼く・・・。

そんなことを繰り返していたらトップセールスになっていたから、これは自信になったよ。

この自信と経験が次のチャレンジへと繋がっていったんや」と私が話すと、「お父さんもいろいろやってきてんなぁ。なんか私も勇気もらえるわ。それから次がリクルート?」と娘が訊くので、「そうや、サラリーマン人生最後のリクルートや。

それなりの営業力のプライドを持って入ったものの、入社して1年は暗黒やった。
東京に馴染めず、超ポジティブな独特のリクルート文化にも溶け込めず、全く違う営業スタイルに自信をなくし、自分の無力さからウツのような状態にもなった。

でもそれを救ってくれたのが、リクルートでアメリカンフットボール部を立ち上げ、日本一を目指すという、当時の社長さんのスポーツ文化プロジェクトやった。

お父さんはアメフトやってたから当然誘われ、あれよあれよという間にプレイングコーチのような立場になっていったんや。

皆と一緒に夢中で球を追いかけるうちに、忘れかけていた自信と勇気を目覚めさせてくれた。

ここでも好きでやっていたことが人の役、会社の役に立ったんやね。

素直な気持ちで仕事にも取り組めるようになり、やがては新しい起業というチャレンジをするようになっていったんやわ」と私が話すと、娘は妙に共感していました。

その時々に学び、気づき、経験を通じて、揉まれ育まれた人間性に生かされて。

「まぁ、カッコ悪い話もしたけど、その都度、転職が本当にいいのか悩み迷った末に、最後は自分の直感を信じて生きてきたら、結局は、学生時代やその時々の職場で学び、気づき、身につけてきた才能や特技、独自の感性や、経験を通じて揉まれ育まれた人間性に生かされて、いい転職時代を経験したと思うわ・・・。

だから最後は自分の直感を信じて、自分らしさが100%発揮できる、夢中になれる仕事を見つけたらいいんちゃうかぁ~」。

そんなたわいもないアドバイスでしたが、娘もスッキリした表情で別れることになりました。

あれから8ヶ月。この三月に娘は、大切に育ててもらった素晴らしい会社から、愛情とエールで見送られて卒業し、新たな職場へと転職します。

自分の直感を信じて、自分が好きで得意で興味のある分野への挑戦です。

若さゆえの特権ですね。
迷い、悩み、これからも思い通りにいかないことがあったとしても必ず糧になるし、心が動くことは止められない・・・。

きっとそこに彼女なりの使命があるんでしょう。

カエルの子はカエル?
「やってみなはれ」のサントリーの故佐治敬三会長の言葉が胸に染みる不安と希望の三月。

人生に無駄は無し。
心の若さを大切にして、新しいチャレンジに一緒に願晴りましょう!

Guts

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