同じ絵本でも、人によって受け取り方が全く違います。
大人に絵本を読んでいて一番面白いことは、同じ絵本でも人によって受け取り方が全く違うことです。例えば、面白い絵本でみんなが笑っているとき、1人だけ泣いている人がいたりします。絵本のどの部分をその人がどう解釈したのかによって、反応が全く違うのですね。反応はその人の経験や知識や価値観、歩んできた人生そのものに影響されています。何人かで好きな絵本を持ち寄って「読みっこ」してみてください。同じ絵本でも人によって感じることは驚くほど違います。受け取り方の違いにびっくりしながらも「なるほど~」と盛り上って楽しい時間になること間違いなしです。
6月の一冊 くらやみのゾウ ペルシャのふるい詩から
ミナ・ジャバアービン再話 ユージン・イェルチン絵 山口文生訳 <評論社>
ペルシャの詩人ルーミーの詩を再話した物語
物語
「大金持ちの商人が、不思議な生き物をインドから連れてきました。その噂を聞きつけた村人たちは、真っ暗な蔵の中に入れられた生き物を見に行きます。一人一人が闇の中で生き物にさわって「ヘビみたい」「木の幹みたい」「でっかい団扇だ」と大騒ぎ。だれもが自分が正しいと、ののしりあい、夜になっても喧嘩が続きます。朝になって蔵の外に連れ出されたゾウには、村人は誰も気がつきませんでした。」
ソムリエのひとこと
「自分が知っているのは、真実のほんの一部分だという事にも、気づきませんでした」という言葉で絵本は締めくくられています。村人が、自分が持っているのは「ほんの一部の真実」だと自覚していたら、それぞれの体験した情報を持ち寄って、全体像(ゾウ)に少しは近づけたのではないでしょうか。一人一人、知識も経験も価値観も違うから、感じ方も違うのが当然です。その違いは対立のためにあるのではなく、違っているからこそ、協力すれば視野を広げることが出来るのだと思います。絵本の感想なら対立することなく、違いを面白がって受け入れることができます。違いを認め視野を広げる練習に絵本は最適です。