第12話(最終回)「I LOVE ME」

ワークショップのきっかけとなった絵本

どんな絵本を取り上げようか、毎月楽しく悩んだこの連載も最終回です。まだまだ紹介したい本が山ほどあるのですが、連載最後の一冊は決めてありました。
13年前、ワークショップのための資料を探していて「I LIKE ME」(私は自分が好き)というアメリカの絵本に出会いました。ちょうどその頃、みんなに好かれている優しい友人が「自分の事が大嫌い」と告白するのを聞いてびっくりしたのですが、実はそんな人が身近に何人も隠れて(?)いたのだと気づきました。だから翻訳出版されたこの絵本を中心にして「I LOVE ME(自分を愛そう)」というテーマでワークショップを始めたのです。

3月の一冊 「わたしとなかよし」
ナンシー・カールソン・作 なかがわちひろ・訳 <瑞雲舎>

「わたしとなかよし」ナンシー・カールソン・作 なかがわちひろ・訳 (瑞雲舎)

心と言葉が一致する場

物語

わたしには素敵な友達がいるの。それはね「わ・た・し」。わたしは「わたし」に面白い本をいっぱい読んであげる。わたしは「わたし」を大事にするの。だから歯磨きもするし、お風呂で体もきれいにするし、ご飯もしっかり食べるよ。鏡に向かって「今日もかわいいね」と朝のご挨拶。くるくる尻尾も、まんまるお腹も、小さな足も、みんな大好き。元気が出ないときにはうんと楽しいことをして遊ぶ。失敗したときは「へっちゃら」って励ましてあげる。どこに居ても何をしていても、わたしはいつも「わたし」と一緒。

ソムリエのひとこと

私はこの絵本を通して「自分を大事にしよう」というメッセージを伝えたのですが、みんなが共感したでしょうか?そう簡単にはいきません。主人公のことを「ナルシスト」だと言う人がいます。「この子みたいにポジティブになれない」と落ち込む人もいます。母親の影響力を絵から読み取る人もいます。人はみんな違う人生を経験してきたのだから、感じ方や受け取り方が違うのは当然。だからこそ大人に絵本を読むのは面白いのです。
自分の気持ちを押さえて周囲にあわせている「いい人」こそ、絵本の感想ぐらいは思った通りの事を自由に話して欲しいと思います。いつの間にか、ずれていることが当たり前になってしまった、大人の心と言葉を一致させる。そんな「場」を絵本の力を借りてこれからも作り続けます。
1年間ありがとうございました!

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