食アドバイザー 田口三江子が語る気づき発見コラム 常食への旅
No.5：あらゆる経験の少なさに足をとられた再出発…第３の人生の挫折
新たな 気持ちで「食」と向かいはじめた私は、それまでの三十数年の人生を振り返ることができるくらいまで、あっという間に「うつ」から抜け出し、私の原点が「食」にあり、針の先ほどの小さなものでしたが、そこに光があることに気づいたのです。
私は、大根を齧ってでも「食以外の仕事はしない」と自分と約束をし、フリーランスとして生きていくことを決意しました。20代のこだわりだった「好きなことを仕事にしない」を「好きなことを仕事にする」、に大変換したのです。しかし、決意をしたところで何をしたらいいのかさっぱりわかりませんでした。
ところが不思議なもので、「さて？」と思っているうちに、夫の縁で出会っていた、テレビに出ているような有名な先生から電話をいただき、「どうしても忙しくてスケジュールがとれないから代わりにお願いできませんか？」と、大手食品メーカーの冷凍パンケーキの開発の初仕事の依頼を受けたのです。
願っても ない大チャンス到来でした。「先生、私は何をすればいいですか？」「行けばわかります。パンケーキレシピを考えておいて下さい。」…え？それだけ？不安の中、食品工場にはじめて足を踏み入れ、無我夢中でブルーベリーパンケーキを作りました。しかし、いきなりいただいた初仕事が苦手分野のお菓子で、なんの特徴もないものを作ってしまったように思います。
18年前だった当時、それが製品になったのかもわからないまま、「初仕事料５万円」を頂き、どん底から一気に有頂天になった私は本当に馬鹿者でした。それ以来、仕事の依頼はありませんでした。
仕事でお金を得ることの、「お金」に気持ちが集中してしまい、あらゆる経験の少なさに足をとられたような再出発でした。第３の人生の挫折はまもなくやってきました。仕事らしい仕事にありつけないまま「食えない３年間」を過ごすことになったのです。