本来、野菜が持っている自然の「うまみ」やエネルギーを存分に引き出す料理法『重ね煮』。
自分や自然界のことを日常の中で知る手立てとして、「食」は体感もあり、大きな機会になります。それを知る切り口になる3種類の料理教室の中から、今回は『重ね煮』料理教室でお伝えしていることを書きます。
ボクがお世話になっていた「わら」の船越さんが師事していた、故小川法慶氏が考案し、「わら」の料理法の基本中の基本となっていたのが『重ね煮』です。
重ね煮とは、野菜を同じようなサイズに切って、自然の摂理に合わせて素材ごとにお鍋の中で層のように重ね、ほんの少しの塩をふり、これにじっくり火を加えて、基本的に野菜の水分だけで蒸し煮にしていく料理法。野菜それぞれが持っている力がお互いに影響し合い、全体が調和して、ただ蒸したのとは違う美味しさを引き出してくれます。
そうなる背景に中国思想に端を発した宇宙原理「陰陽論」があります。葉菜など上に向かって伸びる遠心力で成長し、体をゆるめ冷やす「陰性」の強いものから、根菜など下に向かって伸びる求心力で成長し、体を引きしめ暖める「陽性」の強いものへという順番で野菜を重ねていきます。これに火を加えることで、上に向かおうとする力と下に下がろうとする力が働き、それがお互いに影響し合って、お鍋の中で自然界のバランスと調和のエネルギーが働いて、素材の持つ本来の甘味やうまみを引き出すことができるのです。
基本的に、水を加えていないので、冷蔵庫で1週間くらい保存ができ、そのまま食べても美味しいのですが、ダシいらずで味噌汁が作れたり、うどんつゆ・和え物・サラダ・筑前煮・グラタンにいたるまで、お肉や魚介・ダシやうま味調味料、砂糖・みりんなどの甘味調味料に頼ることなく、塩や醤油などもごくわずかで、いくらでもアレンジ料理を展開していくことができます。
また、身体も調和した状態になるので、一食食べただけでも不調箇所が解消する方も多いです。我々は、食事によって栄養素やカロリーや質量だけでなく、宇宙のエネルギーも取り込んでいることも知っていただきたいのです。
重ね煮の作り方
下から
- しいたけ しめじ えのき たけのこ わかめ 昆布 ひじき など
- なす トマト きゅうり いんげん 豆類 など
- ブロッコリー キャベツ 小松菜 白菜 長ねぎ など
- じゃがいも 里芋 さつまいも かぼちゃ など
- 大根 玉ねぎ にんじん ごぼう れんこん など
- 米 麦 あわ ひえ きび とうもろこし など
- 白身魚 えび いか 貝類 など
- 一番上に塩をひとつまみ振る