色の専門家・草木裕子の色どりメッセージ (3)
そろそろ街や山の色の変化を感じる季節になりますね。
色彩をあまり知らなかった頃は、紅葉はキレイだな〜という感覚だけでしたが、じっくりと向き合うようになると、これほど自然の色を楽しめる時期は無いように思います。
京都の和菓子職人さんは、毎日山を眺めて、その時々の色をお菓子に映すと聞きます。
自然からのおもてなしを感じますね。
秋は、夏の間は青々と茂っていた葉っぱたちが黄みを帯び、オレンジ色から赤に変化していきます。
一枚の葉っぱの中で色の世界を表現しています。
これは色相環の順です。そんな色の変化から、自然の色は一気に変わることが無いと気付きました。
空の色も同じですよ。
夕暮れの空をじっくりと眺めてみるとわかります。
そして、紅葉の色を見る時の楽しみ方があります。
色は、光が多い所(明るい所)では、色が光を象徴する黄みよりに見えます。
また、光の少ない陰では、青みよりに見えます。
だから紅葉を観る時の天候や場所を考えると、違った楽しみ方ができるのです。
お天気の良い日は、オレンジよりの朱色の紅葉が、気持ちも上がる楽しさを贈ってくれます。
そして曇り空の日には、青みよりの赤紫に見え、落ち着きの中で冬を迎える時を告げているように感じますよ。
そして、紅葉もやがて枝から落ちます。
その時はだんだんと紅色(あか色)の明度が下がります。
黒みを帯びてきて茶色になるのです。
精一杯のエネルギー(赤)を使い果たした後は、土の色に還っていくように。
これが自然の循環ですね。
だから、アスファルトの上に落ちた枯れ葉を見ると、その循環に沿っていないような違和感があります。
土に還ったら次の新芽のための栄養になる役割を担うはずなのに。
自然の中で土に還れますように、と心の中で祈るようになりました。
自然の色の変化を、この秋、みなさまもお楽しみくださいね。