「魂のご馳走」

「魂のご馳走」

ほっとメッセージ

完全燃焼の演奏、演技で顧客を魅了。本当に感動しました。

こんにちは。お元気でいらっしゃいますか?

本当に大変だった2020年もあとわずか。
今年は新型コロナでいろいろなことを体験し、今なお“忍”の生活が続いていますが、こんな時ほどスポーツや芸術、エンタテイメントなど、魂が歓び、感動して癒される力が必要だと思います。
春の緊急事態宣言下では、一番打撃を受けたのがアミューズメント・文化の世界でした。一時は、人類にとって文化(音楽・演劇・映画・スポーツなど)は必要不可欠なものなのか?生命の危機に比べたら、それだけの意義のあるものなのか?そんな切ない話をスポーツや音楽に関わる方々とオンラインで語り合ったこともありましたが、今、その答えのようなものが見つかった気がしています。
少し前に嫁さんと2人で、黒澤明監督の代表作の一つである「生きる」という映画を舞台化した芝居を観に行きました。
「生きる」は、名優志村喬さんが演じる市役所の定年間近の事なかれ主義の万年課長が、余命半年の生命の危機に陥り、自分がこれまで死んでいたように生きていたことを悟り、残りの半年間はまさしく生命を賭けて、市民から強く懇願されながらも、縦割り、事なかれ主義の役所の腐敗した体質の中で実現が100%不可能と思われていた「公園づくり」を実現させるというお話です。
葬儀の席で、身近な人が主人公の秘されていた真実とその奇跡(軌跡)を知り、その生命の輝きや信念の凄さ、人に貢献することの尊さを知った感動の名作でした。
死の寸前ギリギリで出来上がった公園のブランコに乗り、雪が深々と降る夜中に「命短し、恋せよ乙女~」と歌う名場面は、今でも思い出せば泣けてくる本当に素晴らしい映画でした。
その名画をお芝居でリアルにできるのか?いったい誰がそんな無謀ともいえる舞台を制作・演出するのか?それは、宮本亜門さんでした。
亜門さんも緊急事態宣言下のテレビのインタビューで、芝居や舞台の存在意義やその価値がいかに大切かを、原点回帰しながらしみじみと語っておられたお一人でした。
「やっぱり亜門さんかぁ~。これは絶対観に行こう!」そう思って、様々な期待が混じって観に行った芝居でした。
コロナ禍、顧客はマスク着用の観劇でしたが、オーケストラや役者さん達は、マスクなしの120%完全燃焼の演奏、演技で、観ている観客を魅了してくれました。歓声もあげられない分、とにかく普段の倍くらいの拍手を贈りました。
主人公の市村正親さんの迫真の演技には、何度も鳥肌が立ちましたが、「生き切って死にたい」「こんな私でも、最後は何か人の喜ばれることを残して死にたい」。そんなセリフを残しながら、ろうそくの灯が消える寸前に成し遂げ、雪の中のブランコに乗って、ゴンドラの唄を歌うシーンでは、私もそうでしたが、まわりのシニア世代の方々がすすり泣く光景があちこちで見られ、本当に感動しました。

失って初めてわかる有難さ・・・。やっぱり舞台って凄いなぁ。歌の力って凄いなぁ。

コロナ禍だからこそ、宮本亜門さんは観客一人一人に生命の尊さと生き切ることの大切さ、我を忘れて人に役立つことの素晴らしさを気づかせようとしてくれたんだと思います。そしてそんな思いを、自己表現の場を失った役者や演奏家の方々に伝え、彼らに生き場所を与え、演じる喜びで人に歓びや感動を与えようとされていたから、映画とはまた違ったリアルな生のエネルギーを感じられたのだと思います。
やっぱり舞台って凄いなぁと本当に感動しました。失って初めてわかる有難さですね。

それは、最近亡くなられた大作曲家の方についても同じ感覚があります。
筒美京平さん。昭和を中心に平成まで手がけたシングルレコード売上は、7560万枚の圧倒的な一位。自らは表に出ない“ヒット曲を創り出す職人”を指向されていました。
裏方の厨房で、その時、その時代の空気や世界最先端のトレンドを加味して味付けしつつ、作詞家の意図や想い、歌い手の個性や声の魅力などに合わせた絶妙の料理に仕上げて世間のテーブルに並べる。その味わいやすさから小さな子供からお年寄りまで口ずさまれ、その人その人のその時々の節目や思い出と共に心の記憶は残り、今でも歌いたくなる歌の数々は驚くほどあります。
あのサザエさんの主題歌から始まって、レコード大賞の「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)「魅せられて」(ジュディ・オング)というメガヒット、何か幸せな気分になる「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)、ザ・ベストテンで一位が何週も続いた「ロマンス」(岩崎宏美)、「異邦人」(久保田早紀)など、大ヒット曲はほぼ筒美さんが創っていたといっても過言ではありません。郷ひろみ、野口五郎、西城秀樹の御三家からジャニーズまで、日本の歌謡曲、ポップスを背負われてきた金字塔のような方でした。
嬉しい時も楽しい時も、辛い時も寂しい時も、知らず知らずに筒美さんのメロディに癒され、明るく元気になり、一緒に口ずさむことでたくさんの人と繋がり合える・・・。
音楽の力、歌の力は本当に凄いと思います。

文化は “生きていくエネルギーの栄養”。水や食料と同じくらい大切なもの

「生きる」の主人公が、生命を削って後世の人々に遺したことやその素晴らしさを、コロナ禍で生きにくくなっている私達に、演出家魂を懸けて人生を生き切る大切さを気づかせようとしてくれた亜門さん。裏方に徹しながら、とてつもないヒット曲を出し続けるというプレッシャーを創作のエネルギーに変えて、人が歓び、世代を越えて歌い継がれる不朽の名曲を作られた筒美さん。
そんな方々が遺し、伝えようとされた生き様や思いに触れることで、私達は生命を燃やし、元気になり、生きる勇気や希望を持つことができる・・・。
スポーツもエンターテインメントも、様々な人の生き様を懸けた一所懸命のパフォーマンスやエネルギーは、観ている者の心を震わせ、感動や歓びなどの魂のご馳走となって生命力を喚起(歓喜)させていく・・・。
だから文化は“生きていくエネルギーの栄養”として、水や食料と同じくらい大切なものだと思います。

今年は、紅白歌合戦も無観客開催になると報じられていますが、テレビやライブ配信でコロナ疲れを解放するいい文化に触れて、豊かな気持ちになって、いい年越しを迎えられたらいいですね。
終わり良ければ、すべて良しにしましょう!
良いお年をお迎えください。

大感謝

Guts

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