フォトグラファー橋本和典のFOCUS eye
file.7 美しいもの
バングラデシュ、首都ダッカ。大通りのバス停の近くで、
たくさんの男性、たくさんの女性が別々に固まって、
何やら待機している様子。
男性チームの群れに、僕好みの「いい顔」が目立ったので、
そっちにレンズを向けてみた。
すぐにフォーカスを合わせたくなったのは、
ほっかむりオジサン。
ダッカでは有り触れてるのかもしれないけど、
僕にはとても可愛らしくて存在感抜群。
あ、おじさん、カメラ向けられているのに気が付いた。
僕からの距離は10メートル弱といったところだろうか。
「ごめんよ、ちょっとこっそり撮っちまったよ。おじさん、いい感じよ」の気持ちをこめて、
口元に笑みを浮かべ、左手を挙げて軽い挨拶をした。
すると、おじさん、僕に微笑みながら、
やはり手を挙げてきた。
異文化・異言語間コミュニケーションでは
言葉や仕草のオウム返しがかなり有効。
これが功を奏し、
「おじさん、気分を損ねちゃわないかな(僕)」と
「あいつ、何をやってるんだ(おじさん)」
の緊張が、見事に緩んだ瞬間だった。
あ、みれば、後ろのニイチャンも
にっこり手を挙げているではないか!