フォトグラファー橋本和典のFOCUS eye
file.5 美しいもの
昔はこの線路をサトウキビを載せた列車が走っていた。
時が経って線路も歪み、それが郷愁を誘う…
という話ではなく、れっきとした現役の鉄道線路だ。
インドネシア、ジャワ島スラバヤの郊外、
インターネットでたまたま写真を見たのをきっかけに
衝動的にやって来てしまったので、
インドネシアに着いた時点ではどこに存在するのかも
わからなかった。
昨日空港で合流したばかりの現地の若者と、
町から村から車を走らせ人々にたずねまくり、
なんとか一日でたどり着いた。
60センチほどの狭い幅の線路を、
つい最近まではSL(蒸気機関車)が走っていた。
近年ディーゼル機関車に移り変わったそうだ。
線路はサトウキビ畑と製糖工場を結んでいて、
一日一往復、
長い貨物列車が歩くようなスピードで走る。
踏切の番をしていたお兄さん、彼もずいぶん
間の長い仕事に就いているなぁと思うんだけど、
「次、何時に列車通る?」と訊ねると、
「2時」。2時間半後だ。
「じゃ、また来るよ」。
じゃ、まぁ、
とりあえずどっかに昼メシに行きましょうか。