吹雪の中、車を走らせながら思い出した絵本は・・・
11月中旬、仕事で北海道に行きました。旭川空港に着いた頃から降り始めた雪は、車で北に向かうにつれて激しくなり、生まれて初めて吹雪の中を運転することになりました。
日が暮れて街灯もなく、他の車も見えない道を走っている間、ヘッドライトに浮かぶのは雪、雪、雪。夜の闇を背景に音もなく雪が飛び去っていき、白い粒子のトンネルを通っているような感じで、時間の感覚もマヒしてきます。
このまま異次元の世界に紛れ込んでしまいそうな気がして、怖いようなワクワクするような気持ちになりました。
車を走らせながら思い出したのは、吹雪の中で道に迷う場面から始まるこの絵本です。
1月の一冊 「だんろのまえで」
鈴木まもる・作絵 <教育画劇>
「非日常での充電」
物語
ある日ぼくは山の中で道に迷い、雪も降ってきて、とても疲れて歩いていました。大きな木にドアがついているのを見つけ、やすませてもらおうと入ると、奥には暖炉があって薪が燃えています。周りには動物たちが寝ていて、ウサギが「疲れたら休めばいいんだ。無理しないでじっとしていれば元気になるさ」と言いました。ぼくが目を閉じて「ここが好きだよ」と言うと「好きになる気持ちがあればどこででも大丈夫。好きな事があればどんな時でも大丈夫」とウサギは小さな声で返します。目が覚めると、窓から光が差し込んでいます。「ぼく行くね」。ぼくはお日さまに向かって駆け出しました。
ソムリエのひとこと
雪の中を疲れながらも歩き続ける少年に自分を重ねる人も多い絵本です。それは仕事に追われている自分かもしれないし、人生そのものを重ねているのかもしれません。暖炉の前という安心な場所(非日常)で眠った少年は、そこに居続けません。再び外の世界(現実)に駆け出していきます。非日常の世界でエネルギーが満たされれば、再び現実の生活に立ち向かっていけるのです。「好きな事があれば大丈夫」というウサギの言葉がありました。「非日常」という感じがするお正月には好きな人と会って、好きな場所に出かけて、美味しい物を食べて、再び駆け出すエネルギーを充電できるといいですね。そしてまた、疲れた時には絵本をゆっくり開くことも、非日常の世界で心のエネルギーをチャージする方法です。この絵本を開けば、いつでも暖炉の前に行けるのですから。