絵本の話からお互いの価値観を知り、理解する。
日本の絵本は様々な言語に翻訳されて世界中で読まれています。逆に世界中の絵本が日本語に翻訳されて日本で読まれています。同じ絵本が言語や文化を超えて親しまれているということは、絵本を介したコミュニケーションである絵本セラピーも世界に通じるのでは?
2019年はそんな問いを確かめるべく海外に行かせて頂きました。
2月は韓国8か所で講演(韓国では私の本が出版されてます)。6月はスイス3か所でワークショップをしました。
文化や価値観による絵本の受け取り方の違いは、感覚的には日本国内での個々人のばらつきとそれほど変わりません。むしろ「へー、韓国の人はそう感じるのか」と違う部分が興味深く、絵本の話からお互いの価値観を知り、少し理解しあえたような気がしました。
10月の一冊 「サイモンは、ねこである。」
ガリア・バーンスタイン作 なかがわちひろ訳 <あすなろ書房>
共通点をいっぱい見つけて
物語
ライオン、チーター、ピューマ、クロヒョウ、トラが集まっているところで、猫のサイモンが言いました。「ぼくたち、似てますね」。ところがみんなは大笑い。一緒にしてもらっちゃ困ると、いかに自分がみんなと違っているか自慢します。サイモンは「何となく似てると思ったんだけどなあ」とがっかりします。その言葉にライオンたちがお互いをじっくり観察してみると、立派なひげ、長いしっぽ、暗闇でも見える目、鋭いツメなど、多くの共通点が見つかりました。それらをサイモンは全部もっていたのです。「やっぱりぼくたち仲間ですね」。
ソムリエのひとこと
お気づきの通り、この絵本に出てくる動物はすべて「ネコ科」です。ライオンやトラとネコでは大きさも外見も大きく違います。一見全く違うように見える動物たちでしたが、共通点をたくさん見つけることで仲良くなりました。ところで人間は?肌の色や言葉や文化が全く違っても、ヒト科のホモ・サピエンスという1種のみだそうです。生命の多様性からみれば人種なんてほんの僅かな違いです。共通点をいっぱい見つけて、世界中の人たちが仲間になれたらいいですね。違いで対立するのではなく、違いを面白がれる世の中でありますように。