10000時間の現場 ~経験を積み重ねる~

10000時間の現場 ~経験を積み重ねる~

食アドバイザー 田口三江子が語る気づき発見コラム 常食への旅

No.7:10000時間の現場 ~経験を積み重ねる~

最後の室礼イベント直後、会場となった120坪のレストランのオーナーから、そこを紹介してくれた友人を通して、スタッフが全員やめてしまうので、グランドマネージャーをやってくれないかというお話を頂き、お受けすることになりました。
しかし、私は何においても殆ど素人同然。プロの仕事がどんなものなのか、何もわからないにもかかわらず、レストランを回さなければなりませんでした。

紹介者の友人が、厨房スタッフ2人、ホールスタッフ2人を揃えてくれ、月1回の頻度できてくれる有名レストランのシェフが料理のアドバイスをしてくれたこともあり、それまで通りとはいかなくても、店は奇跡的に早いタイミングで軌道に乗りかけました。

この時厨房に入ってくれていたのは、最初からそこで働いていた才能溢れる20代の若者でした。フレンチ主体の料理は、基本がしっかりしている本格的なもので、プロの仕事というものをはじめて見せていただきました。

段取りの見事さ、手捌きの華麗さ、創りだされる料理の裏付けとなっている確かな技術。人気メニューの一つだった鯛や鱸のフィレをマリネして作る「鮮魚のカルパッチョ仕立て」は、活きのいい白身魚のフィレをまずは砂糖で締め、それから塩とすりおろしたレモンの皮等で丁寧にマリネするのです。
料理法もさることながら、そのおいしさも目からウロコでした。

ホールスタッフは素人ながらも、身のこなしと接客はなかなかのものでした。私は皆に助けて頂きながら、なんとか体面が保てているといったところでした。

レストラン運営において、「料理」「ホールのオペレーション」「内装」「メニュー」のすべてがバランスよく優れていなければ、お客様の満足度を高めにくいものですが、その頃の私は、ただ目の前に差し迫っている事に対応するのが精一杯。
プロになるには、経験を積み重ねるしかありませんでした。

石の上にも3年、10000時間の現場がそこからスタートしたのです。

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