食アドバイザー 田口三江子が語る気づき発見コラム 常食への旅
No.4:私自身が私らしくいられる瞬間。
カフェ バーの廃業から30代前半頃まで何をしていいかわからず、電機メーカーの営業、日用品小売り、パン行商、エステティックサロン経営、写植版下業、健康産業、IT営業、IT機器販売と、転々と職業を変えながら、途中結婚と離婚も経験し、根無し草のような生活をしていました。
心の救いは唯一つ、ことあるごとに料理を作って友人たちをおもてなしして喜んでいただくことでした。
春から初夏にかけて受けていたのが、「大皿多彩そば」と名付けたごちそうそばでした。
これは直径50センチほどのタイ製の磁器に、山菜や彩りのよい野菜、甘辛く炊いた鶏肉、山芋、とんぶり、ネギ類などを豪勢に盛り付け、その横に同じ程の直径のざるそばを置き、手元の数種類のつけだれにつけて食べていただくというものでした。
10人前はありそうなボリュームでも3~4人であっという間に平らげてくれるのが嬉しく、今思えば私自身が私らしくいられる瞬間がそこにありました。
ところが、 ところが、そんな唯一の心の拠り処は、いつの間にか失われていきました。
当時IT機器販売の仕事がうまくいかず、忙しいばかりで空回りの毎日。人生の目的がいったい何かということを求めながらも答えらしきものが見つからず悶々とする2年余りを送り、とうとう、うつ病になってしまいました。
出口の見えない苦しみ。私自身の存在に価値があると思えず、来る日も来る日も死ぬことばかり考えていました。
そんなある日、当時世話になった方から、「好きなことをしたらいいですよ」と言われました。
おかしなもので、あれほど「好きだった料理」のことを初めは全く思い出せず、当時飼っていた犬と遊ぶ事しかできませんでした。そうこうしているうちに、「料理」のことを思いだし、今度はそれまでと全然違う気持ちで「食」と向かい合うことになりました。
私の第3の人生が始まったのです。