食アドバイザー 田口三江子が語る気づき発見コラム 常食への旅
No.3:「食」と対話する大切な時空間から生まれた究極のレシピ
18歳 で、図らずもカフェバーで社会人デビューをしてしまった私は、オーナーの意向で閉店することになった22歳の時、父に頭を下げて英語の専門学校に行かせてもらうことになりました。
なぜ英語だったのかというと、もう一度何かに打ち込んでみたかっただけで、何でもよかったのです。卒業すると英語とは全く関係ない電機メーカーの営業職に就き、3年後に結婚し、さらに3年後に離婚。
目まぐるしい20代の私にとって、「料理」は唯一の心の拠り所でした。人生で初めて沢山の人達に喜んで頂く経験をさせてもらった店の廃業がショックだったのか、それ以来「好きなことは仕事にしない」という信念を持ち、再び職業としての「食」の世界に足を踏み入れようとしなかった私には、食とは関係のない仕事をすることによって、自分の内側が「食」と対話をする大切な時空間を得たようなものでした。
この頃、専ら興味があったのは、「手作り料理でおもてなし」。
20代になって父に連れて行ってもらった様々な名のあるレストランで、いわゆる「もてなし」を受けた強烈な記憶から、人に喜んで頂くには、料理を作って食べてもらうだけでは足りないと思い始めました。
それから 10年程、土日となれば自宅に友達を招いて、いろいろな料理をいろいろなスタイルでお出しして感想を聞かせてもらい、その先「食」の仕事をすることになるとは夢にも思わず、コツコツとオリジナルレシピノートを書き連ねました。そして友達から喜んでもらうことで、どんなに辛い事があっても「癒し」を得ていました。そんな中、24歳の時に生まれた自称大ヒット作が「トマトチーズフォンデュ」です。これは、私の嗅覚が生んだ、おそらく誰も思いつかない究極のレシピだと思います。
あえて「食」の業界から離れたからこそ生まれた遊び心ある一品。
20数年の時が過ぎた今でも色褪せることのない、私のおもてなし料理のとっておきです。