東洋医学の智慧に学ぶ予防医学と心身医学
西洋(現代)医学の進歩はめざましいものがある。しかし 近年、専門化・細分化されすぎ、時として「木をみて森を見ず」に陥りがちの西洋医学だけでは解決が難しい分野(不定愁訴や副作用の緩和、体質改善等)を中心に、東洋医学への注目度が高まっている。
東洋医学は、症状ではなく人を診る方法をとり、体質改善を図り、体に備わった自然治癒力を引き出しながら、まだ検査では異常が見つかっていない、病気になる前の「未病」段階から治していくのが名医であると考える。
また、東洋医学は、「身体の状態と精神(心)の状態 は密接な繋がりがある」と考え、身体にある主要な臓 器を含めた経絡と呼ばれる気血の流れに、それぞれ対 応した感情があるとしている。
五臓六腑という言葉があるように、心臓や肝臓のように中身が詰まった臓器を「臓」と呼び、胃や小腸のように中が袋状になっているものを「腑」と呼び、肝と 胆、心と小腸、脾と胃、肺と大腸、腎と膀胱が「臓」と「腑」の陰陽ペアになっている。
例えば"肝胆相照らす仲" 東洋医学の身体観に基づいた表現。
例えば、「肝」は「怒」に対応している。「肝」に不調があれば、忍耐力が低下し、短気になり、怒りの感情が生まれやすくなる。"癇癪""癇に障る""疳の虫"などの言葉は、そこから派生した言葉だ。また、気力や度量があることを"肝っ玉が大 きい"とか"肝が据わっている"などという。
「肝」と陰陽のペアである「胆」は「決断力」に関わる臓器である。"胆力""大胆""魂胆"などという言葉が生まれた所以はそこにある。
「臓」を支える大事な「腑」である「胆」が弱まれば、"腑抜け"てしまい"落胆"してしまうが、"腑に落ちた"ら決断出来る。
仲が良い様を「肌が合う」「気が合う」「息が合う」 などというが、"肝胆相照らす仲"という表現もある。
肝と胆、どちらも生命を支える大切な臓器であることから、互いに心の底から理解しあう仲を意味する。
このように、漢字や日本語の中には、東洋医学の身体観に基づいた様々な表現を見出すことができるのが興味深い。