連載8 「一人を大切にしないで、集団を大切にすることなんてできません。」

連載8 「一人を大切にしないで、集団を大切にすることなんてできません。」

一人ひとりの心の声に耳を傾けて。

春は終わりと始まりの季節ですね。満開の桜の花の下に立てば、心いっぱいに暖かくなり、日本人でよかったなと感じます。
わが子と自宅から始めたチューリップルームも今年度で23年目を迎えます。大きな出来事が幾つかあり、そのすべてのことがあって、今があると思っています。
大きな出来事は、3歳児(年少さん)までのチューリップルームだったのが、4、5歳児組(年中、年長さん)までになったことです。一人の子との大きな出会い。S君は、いわゆるガキ大将タイプで大人の言うことを聞かない子でした。よく遊び、悪いこともし、怒られ、笑い合いながら1~3歳児を過ごし、4歳児になり幼稚園に行きました。
でも本人には合わず、お母さんからも話を聞いていた半年間。その後S君は幼稚園に行けなくなり、他を親子で探していました。が、見つからず、途方に暮れていた時、お母さんが言いました。「Sがしお(私)と二人でいいからチューリップ幼稚園がいい!と言ったのよ」と。私はその時に、やらなければ!と決意しました。次の日に新しい部屋を借りる予約をして、S君のお母さんに伝えたのです。「S君と二人で大きい組、やるよ!」と。周りは驚きと大反対。でも、S君がよくて私もできるのなら何の問題もないでしょう。(ここで変人パワーが炸裂してしまいました)何を大切にするのかがはっきりとした時でした。

卒園式で私はS君に感謝をします。S君の存在をみんなにも伝えます。
目の前の一人の子の本当の気持ちを大事にすること。一人を大切にしないで、集団を大切にすることなんてできません。大切な一人が集まっているのが集団です。4歳ながらも心のがけっぷちに立って、友達が大好きな彼が「しおと二人でいいから・・・」。その言葉は「チューリップルームがいい、しおがいい」と子どもが認めてくれたのです。その喜びと子どもへの信頼が、今の私と、23年になるチューリップルームを支え続けてくれています。

一人ひとりの心の声に耳を傾けて。

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