6月の雨の匂い

雨が嫌い、なんて誰が言ったのでしょう。いいや、そんなこと誰も言っていませんよ。
もちろんさわやかに晴れた日は気持ちもカラっと冴えわたり爽快な気分になりますが、
静かに降り続ける雨の日は自分の中に広がっている小宇宙を覗くには
とても良い機会だと思います。

雨の匂い、を感じてみましょう。
窓を開け、肺の形が分かるほど、深呼吸をしてみると、雨の匂いがします。
その日、その時、天から舞い降りてきた水という不思議な贈り物に、
微かな香りが付いていることに気が付きます。

匂いは記憶を呼び覚まします。
その日の雨の匂い。
それは深い緑に覆われた森で遊んだ、遠い日の午後のにわか雨に似ているかもしれません。

水は記憶しています。
様々な情報を記憶し、溶かし、目に見えないものとして、
私たち人間のあらゆるところに関与しています。
その記憶に触れ、感じることによって、私たちは何かに気付き、目覚めるのです。

だから、雨は素敵な贈り物です。
雨の匂いを感じたら、手のひらに受け止めて、感じてみましょう。
意外に温かいかも知れません。

柔らかさ、鋭さ。さらに耳を澄ませて、雨の音を聞きとってみてください。
ひと度、心から雨を感じると、雨が好きになります。
あなたが「雨が好き」と言ったその瞬間から6月は、天からの贈り物が降り注ぐ、
恵みの季節になります。

そんな風に思えたら、窓ガラスを伝わって落ちて行く雨粒がとても愛おしく、
その行方が気にかかってしまいます。

記憶の結晶とも言うべき雨粒の行く末を思いながら流したい曲がいくつか心に浮かびました。
その中から、ちょっと意外な、でも曲が始まると、
これこそ雨降りの日に相応しい歌だと思えてくる１枚のＣＤがあります。