「背中を押されて」

ほっとメッセージ

「背中を押されて」

こんにちは。お元気でいらっしゃいますか?

母親を助けたい気持ちと美味しいと喜ばれる嬉しさ。それが自己肯定感に。

春爛漫。眩い光を纏った春風が心地よい4月。
ようやくマスクも外せて、学校や職場にコミュニケーションと活気が蘇ってきています。

そういえば3年前の4月に、私の娘(山口祐加)が自炊料理家として自立していっている話をこの誌面にてお伝えさせていただきました。その後彼女は本を3冊出し、さらにもう2~3冊が今年出版されるというから、本当に有難い話です。

身内びいきの話で恐縮ですが、20代後半に独立し、今年で31歳になる彼女には、運も縁も味方をしてくれているようで、本当に若さっていいなぁとつくづく思います。
そこには彼女の「自炊の楽しさや喜びを知って楽しめる人を増やしたい」という純粋な想いがあり、日々作る等身大の料理をSNSにあげたり、考え方や想いを発信してきた積み重ねが、コロナ禍で自炊を余儀なくされた世の中の流れとマッチして、ここ2~3年で新聞や雑誌にも取り上げられるようになっていきました。

食の神様が「見栄えや出来栄えが中心になり過ぎて料理のハードルが上がってしまった昨今、もっとシンプルで簡単で、誰でもできる料理の考えや作り方を教えてあげてね」と娘の背中を押してくれているような気がしてなりません。

思えば、幼少期にアトピーになり、数年間はアレルギー除去食が中心で食べたいものが食べられないという強いストレスを抱いていた時期がありました。
そんな食のストレスを乗り越えて、ようやく好きなものを食べられるようになった小学生の頃、最初に彼女の背中を押したのは、仕事で疲れ果てて夕食を作る気力を失くしていた母親の一言でした。
「お母さんがしんどい時、祐加ちゃんがごはんを作ってくれたら、お母さん嬉しい・・・」。

食制限から解放され、食への興味や欲求が高まっていた娘は、それからどんどん料理の仕方を身につけ、自分なりの料理の感覚や楽しさを覚えていきました。
母親を助けたい気持ちと、「祐加の料理、美味しい!」と私達夫婦に喜ばれる嬉しさ。それがやり甲斐や満足感、自己肯定感という地層を少しずつ築いていったのだと思います。

さらに、自宅に訪れる私達夫婦の友人にもその料理の腕を振るうようになると、また感動されて、料理がいかに場を豊かにし、食する人同志を幸せに楽しませることができるということを体で味わい、料理好きという地層をより厚くしていきました。

得意な料理で皆に喜ばれ、役立つことで、小さな社会の中で
生かし生かされることを身を持って体験していきました。

そんな彼女に大きな転期が訪れたのは小学5年の時。背中を押したのは、私の友人で作家の本田健さんでした。

「祐加ちゃんは自立心も強いから、もっと自然で個性を大切にして学べる学校に行った方がいいのかも・・・」という健さんの言葉がきっかけとなり、福井県の「かつやま子どもの村小中学校」に転校したのです。

親元を離れ、寮生活をしながら体験学習中心のとてもユニークな小・中学は通う生活が始まりました。
当時、親としては断腸の思いで送り出しましたが、この選択が、彼女が自分の足で歩いていく自信と素地をつくっていったのだと思います。
そしてその寮生活で、一人娘の自分がいかにワガママに育ってきたかを痛感しつつ、学友との共同生活から人間関係を学び、得意な料理で皆に喜ばれ、役立つことで、小さな社会の中で生かし生かされることを身を持って体験していきました。
この頃から、好きなことを生かしながらの社会適応能力や、自立能力などが磨かれていったのだと思います。

そうして自分の考えをしっかり伝えられる術を身につけていた彼女は、運良く慶応大の湘南藤沢キャンパスに通うことができました。そこでたくさんの個性や才能にあふれる先生や仲間との出会いがあり、その繋がりが今の彼女の仕事や交遊人脈にも結びついています。

大学を卒業すると、アットホームで居心地の良い出版社に勤め、恵まれていた社会人生活を送っていましたが、「やっぱり食が好きだから食の仕事をしたい!」と、3年足らずでフリーに転向。
食のイベントやプロデュースなどの仕事をする中、今度は幸運にも発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに出会ってまた背中を押され、彼女は料理家として産声をあげることとなり、天命ともいえる「自炊料理家®」への道が開かれていきました。

出会うべき人に出会い、背中を押してもらいながら天分に目覚め、生かし生かされていくんですね。

この2月には、嬉しいことにあの本田健さんが、自身のフェイスブックライブで娘とコラボ対談をしてくれることになり、世界的人気作家にも関わらず、まるで旧交と成長を味わうかのように話してくれたことがいっそう感慨深く、夫婦で泣きそうになりながら観ていました。

20年以上も前から今の時代を予見し、大好きなことをライフワークにして、幸せに豊かに生きることを一貫して発信し続けてきた本田健さん。時が熟して、ようやくそんなライフスタイルが広がりつつある今、そのモデルとなるのが、彼にとっては遠縁の娘のような存在の祐加なのかもしれません。

健さんも、20年ぶりの再会と祐加の成長、そしてライフワークを生きているその姿は嬉しいのだと思います。
著名となっても変わらない彼の義理固さと正直さ、そして人を喜ばせ、時に背中を押してくれる愛情の深さにはいつも感動させられます。

人は、様々な節目で出会うべき人に出会い、背中を押してもらいながら自分の天分、天命に目覚め、それを生かし、生かされていくんですね。
私自身と娘の人生を振り返りながら、つくづくそう思います。

そんな娘が今、一番楽しくて嬉しいことは、「子供達の自炊レッスン」です。
かつて彼女がそうであったように、子供達は想像力、創作力が自由で豊かだから、大人では思いもつかない素材の使い方や組合せ、味つけなどを考え出し、教える娘も毎回感動しています。
親子のコミュニケーションもアップし、お母さんも一休みできるから、一挙何得もありますね。
きっとここから将来の自炊料理家がいっぱい育つのでしょう。

春、自炊料理家という畑に、豊かな実りが育つように、今日も娘はその種を植えています。

大感謝

Guts


山口祐加の本

・週3レシピ 家ごはんはこれくらいがちょうどいい。〈実業之日本社〉
・楽しくはじめて、続けるための自炊入門〈note株式会社〉
・ちょっとしたコツでけっこう幸せになる自炊生活〈エクスナレッジ〉

オフィシャルページ
「こんにちは。自炊料理家®の山口祐加です。」
https://yukayamaguchi-cook.com/

note 山口祐加@自炊料理家®
https://note.com/yucca88/

【本田健 Facebookライブ】
自炊料理家®️の山口祐加さんと語る「大好きなことを発信する生き方」
https://youtu.be/XIH0D-Ferlc

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