そうか・・・。とうとう離れ離れになる時が・・・。
わかっちゃいるけど・・・
こんにちは、お元気でいらっしゃいますか?
桜咲く4月。新入学、新入社、新天地など・・・
新芽が成長する始まりの時節、私の一人娘も、この4月から京都の建築系の出版社に入社することになりました。そういえば今年の2月に、数箱のダンボール箱に、服をたくさん詰め込んでいる娘の姿がありました。
「どうしたん?バザーか古着屋さんにでも持っていくの?」と私が問うと、「お父さん、何言っているの?真近になったら大変だから、今からコツコツと引越しの準備をしてるの」と娘。
「えっ引越し??」私は、その時余りにも突然で、その意味がよくわかりませんでした。「3月の半ば過ぎには京都に移り住んで、早めに地元になじんで、入社する準備をしておきたいの・・・」と娘に言われて、ようやく彼女のしている事が私の中で繋がりました。
「あっ、そやな。それは大事やな・・・」そう言って私は彼女の準備万端さを褒めましたが、心の中では、「あっ、そうか・・・。とうとう離れ離れになる時が来たんだな・・・」と、とても寂しい気持ちになりました。
一人の親として、子供を育てるエネルギー、時間、苦労は計るべきものがありません。ただただ、我が子が一人前の人として育つように、無償の愛と労力を注いで、小さい時から“滑った、転んだ”をいっぱい経験しながら、共に一つ屋根の下で暮らしてきた・・・。
子供が生まれた瞬間から、夫婦の役割りは、妻・夫の前に、“お母さん”“お父さん”であり、子供が“家族”という“宇宙の中心”になる。その宇宙の中心がぽっかりいなくなることは、今まで太陽や月の役割をしてくれていた“子供”からエネルギーをもらえなくなる・・・。
結局、育てているつもりが、日々の子育てや子供のびっくりするような成長を通して、親の方がとんでもないエネルギーをいっぱいもらってきた・・・。
そのエネルギーによって“一人前の親”へと成長させてもらってきた・・・。
そうやって家族という宇宙が成長し、進化し合っているのかもしれません。
それくらい影響し合っている宇宙の中心である子供が“居るのが当り前”と思っていた現実が変わることは、わかっちゃいるけど、親としてはなかなか受け入れ難いものですね。
振り返れば12年前、事情があって、娘が小学校5年の3学期に、東京から福井の『かつやま子どもの村小中学校』という体験学習を中心とするユニークな学校に、編入、転校した時も、約4年間、私達は子供が急にいなくなるとてつもない寂しさと不安を体験しました。
まだ親業真っ只中でしたし、子供も小学5年ということもあり、福井の学校に転入する日の朝、私はホテルのラウンジで今まで無意識に抑えていた感情が抑えきれなくなり、肩をひくひくさせながら、大粒の涙をいっぱいためて、不覚にも大泣きしてしまいました。
子供を送り出し、二人きりになった時の体験と気づきが
私達夫婦のとても大きな成長の糧になりました。
思えば、嫁さんはもっと早くからつらそうに、寂しそうにしているのを、男の私は仕事にかまけ、現実を直視しようとしていなかった・・・。
現実を突きつけられるまで分からなかった・・・。
きっと怖かったんだと思います。
それくらい、親にとっての子供は自分達の分身であり、人生の一部になっている・・・。
父親の私でさえそうなのだから、産んだ母親の寂しさ、辛さは比較にならないくらいの感情が渦巻いていたと思います。
そして、子供中心のお父さん、お母さんの役割を演じている家族から、原初の夫婦二人だけの家族になった時に初めて、夫婦二人だけの会話がほとんどなく、大半が子供のことで二人の生活や人生が占められていたことに気づいて、お互いハッとしたことがありました。
「子供以外の会話で何をしゃべっていいかわからないね」
「今でさえこうなんだから、これに色々な夫婦の溝が積み重なっていったとしたら、本当の子育て終了時に“熟年離婚”が生じてくるのもわかるような気がするね」。
二人きりになった私達は、そんな会話をその時していましたが、その体験と大きな気づきが、その後の私達夫婦の会話と絆を深めいってくれたことは、とても大きな夫婦の成長の糧となりました。
“子育て卒業生の旅”が始まります。
経験を役立て、素敵な夫婦に成熟していかないと。
あれから十二支が一回りした今年、娘は子供から大人へと成長し、社会へ出る一歩をこの4月から歩み出します。
東京から京都という、普通の人とは別の道を行くのも私達の娘らしい?
「お父さん、新入社員って、朝、出社の何分くらい前に行ってた方がいいの?」こんな質問を彼女からされるのが、嬉しいような、頼もしいような複雑な気持ちになりましたが、親としては、とても清々しいエネルギーをやっぱり彼女からもらっています。
彼女もこれから社会や会社という未体験ゾーンの宇宙へと旅立ってゆきますが、そこには、またきっと、さらに彼女を素敵な大人、女性へと成長させてゆく出会いや物語がいっぱい詰まっているのだと思います。
そして私達夫婦も、今度は子供を育ててきた素晴らしい経験と歴史を大切にしながら、それらを社会へ役立たせ、素敵な夫婦へとさらに成長、成熟していかなければなりません。
もちろん、私たちも未体験の“子育て卒業生の旅”にはなりますが、素敵な人生を歩んでいらっしゃるたくさんの諸先輩方がいらっしゃるので、娘に負けないように、いろいろなご縁の中からたくさんのエネルギーをいただきながら、たわわな“黄金の稲穂”になれるように成長していきたいと思います。
様々な成長物語が始まる4月。
いつまでも初々しさを失わずに生きていきたいものですね。
合掌
Guts