だんだん自分が食べているかのような感覚に・・・
「グルメ」という言葉は日本に定着しましたが、もともとフランス語で「美食家」という意味ですので、当初は高級料理を食べるイメージでした。しかし近頃は「B級グルメ」など身近な美味しいものを食べるのも「グルメ」と言われます。その代表的なものが「孤独のグルメ」という漫画(2012年からテレビドラマ化)ではないでしょうか。「孤独のグルメ」の舞台は大衆食堂のような店がほとんどで、主人公の中年男が独りでひたすら食事を楽しむシーンと心の声を実況中継(?)します。一人称での味覚や感情の描写を見ていると、だんだん自分が食べているかのような感覚になります。
今月はその「孤独のグルメ」作者の久住昌之さんが描いた絵本。そして主人公は「大根」です。
12月の一冊 「大根はエライ」
久住昌之・作絵 <福音館書店>
ゆっくり何度も観察すると、もっと興味がわいてくるかも。
物語
大根はエライと言うと「なんで?」と聞かれたりする。ちっとも偉そうに見えない大根だが、日本の食卓で大活躍している。大根おろしは実にいろんな料理と合うし、切り方でサラダにもツマにもなる。おでんに煮物、漬物、汁物。葉っぱも皮も食べられるし、消化を助け栄養もたっぷり、春の七草にも入っている。人気、実力ともにナンバーワンの野菜だ。大根よ、もっと自己主張しろ!「オレが一番だ!」と。しかし大根は「いや、ボクはいいよ」と小さな声で言いそうな気がする。大根って、そういうやつなんだ。
ソムリエのひとこと
もともと2003年に月刊誌として発行された科学絵本です。2018年にハードカバーで復活し、なんと第24回日本絵本賞を受賞しました。実は「孤独のグルメ」も漫画の連載開始から18年後にテレビドラマ化されています。久住さんは「僕はいつも一つのものをゆっくり何度も観察している。下手なこだわりなんて持たずにね。すると、頭で考えて作ったギャグなんかよりよほど面白いものが見えてきます」と語っています。
ふと疑問に思った事はネットで検索すればすぐに知識が得られる時代です。それで分かった気になってしまうのですが、もしかしたら、自分でゆっくり何度も観察すると、もっと興味がわいて深く知りたくなるかもしれません。そんな知的好奇心に科学絵本は最適なんですよ。