雑誌やYouTubeで本や著者の紹介を連載しているサトケンが、あなたの中にすでにあるものを思い出し、生きる歓びを見出す本とのご縁を繋ぎます。
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『脳は耳で感動する』
養老 孟司(著)/久石 譲(著)
<実業之日本社>
音から入って、科学、哲学、社会学、人間から虫まで
解剖学者で虫の研究者でもある養老孟司先生のYouTubeをよく見ています。広範囲な知識や経験から独自の視点でいろいろなテーマを解体し、小気味のよくコメントされているのを観るのが楽しみになっています。
一方、久石譲さんは、ジブリ映画「風の谷のナウシカ」から「風立ちぬ」まで、主要な作品全部の音楽担当をされてきて、その引き込まれるメロディが大好きだったので、この本を書店で見かけた時、すごく面白そう!と思いながらも一体どんな話が展開されるのか、想像もつきませんでした。
基本的には久石さんが投げかける質問をきっかけに、養老先生が縦横無尽にあらゆる分野に広げながら回答して、それをまた久石さんが音や音楽を通して理解していくという興味深い流れで、同時にボクら人間を解体されながら考えたこともない視点で理解したり、現代社会を見たりできます。
ボクらが失いつつある感性、知ったつもりになっていること、これからどうやって生きていくのかという生存の価値・・・単なる音楽対談ではなく、自分のありようと本当に生きるってどんなことなのか、人や自然として忘れてしまったことを思い出して、あらためて考えを巡らせる機会をもらえるんじゃないでしょうか。
個人的には「自然の中で何かを発見するというのは、僕が閃くのではなくて、自然が閃くことばかり」という養老先生のフレーズが印象的で、ヒト目線と真逆の発想が新鮮でした。
「自分が閃かなくて困っている人は、みんな自然の中に出ていけばいい」というのは、まさに至言です。
この本は、随所に「なるほど!」が散りばめられていて、養老先生によるまえがきと、久石さんによるあとがきを読むだけでもワクワクしてきっと興味をかき立てられると思います。自分は人生をどんな作品にしたいのか。じゃあ、どう生きるんだという観点で考えるキッカケにもしてみてください。
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自分を取り巻く世界をどんな風に見て感じるかが、地球の行く末につながると思った時にぜひ読んでほしい一冊です。