select5 | 自然で喜びに満ちた解決策。それは「食べ方を変える」こと

select5 | 自然で喜びに満ちた解決策。それは「食べ方を変える」こと

雑誌やYouTubeで本や著者の紹介を連載しているサトケンが、あなたの中にすでにあるものを思い出し、生きる歓びを見出す本とのご縁を繋ぎます。

select5
スローフード宣言
食べることは生きること
WE ARE WHAT WE EAT

アリス・ウォータース(著)/ボブ・キャロウ(著)/クリスティーナ・ミューラー(著)
小野寺 愛(訳)
<海士の風>

自然で喜びに満ちた解決策。それは「食べ方を変える」こと

ボクが52年間の人生で唯一、食事をして涙が止まらなかったレストラン。
コースの最初のサラダから「やさしいねぇ」と言い合いながら、ひと皿ごとの季節の味や香り、個々の食材の個性と調和を堪能していました。そして、メインの鴨肉のローストをひと口噛みしめた時、命が明け渡されてバトンを受け取ったような感覚があり、優しい温かな涙がとめどなく流れてきました。
今でも鮮やかに記憶に残る、味だけではない感覚の体験。
それがアメリカで最も予約が取れないと言われるレストラン「シェ・パニース」でした。

そのオーナーであり、世界中にスローフードを普及させ、「おいしい革命」を引き起こした料理人、アリス・ウォータースさんの最近の著書。

アリスさんは、1971年にカリフォルニア州バークレーでレストランを開業。地産地消、有機栽培、食の安全、ファーマーズマーケットなど、今や食のトレンドとなった重要なコンセプトを実践し、それはスローフード革命として世界中に広がっています。

貧困や飢餓、災害、農業の衰退、薬物中毒、鬱、労働者の酷使、不誠実な政治、気候変動がもたらす脅威。

あらゆる問題の芽は、何らかの形で私たちが食べるもの、そして食のシステムにつながっているとするアリスさん。
最も直接的で自然で、かつ喜びに満ちた方法ですべてを根底から変えることができる。それが、「食べ方を変える」こと。

グローバルな問題への解決策は、実はローカルにある。
人は無力ではないこと、そして喜び溢れる日々を過ごすことが何につながるのかが、色んな事例を交えて丁寧に書かれています。

この本は、共著者との3人で4年間、実体験をひたすら深く掘り下げてちょうどいい言葉を探して紡がれた、構想10年の集大成。
それを日本からカリフォルニアまで学びに行き、暮らしや地域で実践している訳者の小野寺愛さんが「あの温かな存在感をのせたい」と心配りされ、「小さな島で実際にスローフードを体現している海士町の出版社から出しましょう」とアリスさん自身が選んだ出版社。
アリスさんから始まるそんな丁寧で温かなリレーの言葉のバトンを受け取ってください。

こちらもおすすめ

フード・ルール
人と地球にやさしいシンプルな食習慣64
マイケル・ポーラン (著)/ラッセル秀子 (訳)
— 東洋経済新報社 —

「おばあちゃんが知らない食べ物は食べてはいけない」など、アリスさんの本を読んで、食品知識がゼロでもすぐに実践できる、健康にも環境にもやさしい食べ物の選び方・食べ方を紹介しています。

関連映画

WE ARE WHAT WE EAT
ー未来につなぐ おいしい解決策ー
[上映時間 66分]

アリス・ウォータースさんが昨年秋に来日された時に撮影されたドキュメンタリー映画。
日本を旅して“地域を豊かにする食”と“生かし合う経済”に出会い、スローフード文化を根付かせようという各地域の取組みや、アメリカでシェ・パニースのスタッフや生産者たちのインタビューも紹介されています。

人にキク、地球にキク本カテゴリの最新記事