“才能は有限、努力は無限”。理想実現のために重ねる努力の深さ。
こんにちは。お元気でいらっしゃいますか?
今年も早6月。コロナ禍、オリンピックのことも含め、アスリートにとっては本当に厳しい日々が続いてきたかと思います。それだけに、その大変な状況下での活躍は、私達にたくさんの感動と勇気を与えてくれています。
この春の松山英樹選手の悲願のマスターズゴルフ優勝の快挙のそのひとつ。朝早くに生中継のテレビ実況を観ていたら、優勝の瞬間、実況のアナウンサーも解説の中嶋常幸さんもしばし言葉に詰まり、その後、涙ながらにその栄誉を称えておられ、彼がいかに凄いことを成し遂げたかがヒシヒシと伝わって、目頭が熱くなりました。
昭和~平成のスターゴルファー、ジャンボ尾崎、青木功、中嶋常幸、丸山茂樹、片山晋呉さんなどが何十回とチャレンジしても破れなかった壁を苦節10年でこじ開けた奇(軌)跡は、諸先輩方からも涙と共に本当に絶賛されました。きっと、ゴルフファンのみならずアスリートや日本国民に「日本人でもやればできる!」という自信と勇気を与えてくれたと思います。そしてそれは、これからゴルフを始めようとしている人や始めだしている子供達に、大いなる憧れと可能性の火を灯すことになったと思います。
松山選手も、マスターズ勝者だけが着られるグリーンジャケットにアジアで初めて自分が袖を通すことができ、子供達の未来に希望と勇気を与えられたことが本当に嬉しいと語っておられました。弱冠29歳の快挙はまさに国民栄誉賞ものですね。
彼の小さい頃からの座右の銘は“才能は有限、努力は無限”という言葉でしたが、自分の理想を追い求めるのに一切の妥協を許さない練習・トレーニングの姿勢は、大先輩の青木プロ、中島プロも認めるところでした。そして道に迷ったら、先輩方に教えを乞いに行く素直さも持ち合わせていましたので、誰からも愛され、応援されていました。
無骨ながらも大好きなゴルフの上達と自分の理想実現のためには、人一倍考え、研究を重ねる松山選手の努力の深さや質量はやはり普通の人とは比べものにならないのだと思います。その辺りのことを、野球評論家で80歳で野球殿堂入りされた球界屈指の名指導者、権藤博さんがあるコラムで話されていました。権藤さんといえば、選手各々の長所や才能を引き出す指導法で、個々の特徴や可能性を開花させ、長期に渡る活躍を支援、指導されてきた名伯楽。教え子には、佐々木選手や野茂投手、松坂、ダルビッシュ、田中、前田投手など、過去も現在も大リーグで大活躍する投手や、今を時めく大谷翔平選手も名を連ねます。そんな権藤さんが松山選手と何度か会食された時に感じた特別な印象があるといいます。
抜きん出る人と出ない人の違いは“センス”の違い。飽くなき信念と集中力が奇跡を呼び起こす力に。
寡黙に食事をしながら、こちらの話に「フフフ」と照れ笑いにも似た表情で答えるその様子は、侍同士が向き合った時に“おぬしできるな・・・”と静かに言うあの感覚によく似ていたそうです。その感覚は、昔教えていたあの日本人大リーガーの扉を開いた野茂英雄さんを彷彿とさせるものでした。2人に共通するのは、寡黙に脇目もふらずに何かに突き進んでいる凄さ。そして2人共、センスの塊だと見抜かれました。それは彼が天才であるという感覚ではなく、練習の仕方が本当にうまいという感覚で、その感覚を権藤さんは“センス”と呼んでいました。
高校、大学、社会人で一流選手であっても、プロの世界となれば、過去の成功体験や栄光を捨てて、これからの理想の自分と今の自分の課題をよく分析し、俯瞰して見つめ、本当に必要なこと、大切なこと、基礎的なことを徹底して研究、観察しながら努力し続けられるか・・・。そして、苦手なことや厳しいことを言ってくれ、親身に考えてくれている先輩や良き指導者のアドバイスを素直に聞き、自分の中にしっくりと馴染ませながら自分のものにしていく貪欲さや好奇心、探求心がどれだけ純粋かつ強いか・・・。人と比べずに、己と戦い、己に克って心技体を磨き、成長し続けるそのプロセスを厳しいと思いつつも心地良いと感じながら、脇目もふらずに突き進められるかどうか・・・。人に言われてやる。自分で考えずに流されるままにやる。人の目ばかり気にしてやる。過去の自分にしがみついてやるなど、スポーツに限らずどんな分野でも、抜きん出る人と出ない人の違いは、こうしたセンスの違いにあるのでしょう。
人一倍工夫、努力しながら自分特有のセンスを磨き続け、理想の自分に成長していく。その飽くなき信念と集中力と実践の積み重ねの差が、不動の自信となって奇跡や運を呼び起こす力になるのだと思います。
本当に凄い選手は、試合中に絶体絶命のピンチが起こっても、自分を信じる力が強く、そのピンチを心身がどう修正して対応すればいいのかを知的にも経験的にもわかっている。いわゆる修正能力が抜きん出ているから大崩れせずにその場を凌ぎ、後に来るチャンスを確実にモノにするから凄いのだと思います。松山選手や田中投手、大谷選手などに共通する凄さです。
“随処の主”となって役割を楽しみ、磨き、人生の金メダルを目指したいですね。
そしてこれらはまさに、若くして生死の淵をさまよう大病から不死鳥のごとく復活し、奇跡の五輪出場権を見事に手にされた、水泳の池江璃花子選手にもつながる話です。
「努力は必ず報われるんだと思った」という池江選手の涙のコメントに、権藤さんはこうつぶやかれていました。「努力をした人がみんな報われるわけではない。池江選手もまたセンスを持った選手なんだろう」。
本当にその通りだと思います。
そんな権藤さんは、少し前に教え子の大谷選手に「オフは何してるの?」と尋ねたそうです。その時の返答は、彼の真っ直ぐで純粋な永遠の野球少年としての人柄を表していたと言います。
「やることがないから練習してます」。きっと松山選手と同じように「フフフ・・・」とはにかみながら答えたのだと思います。そんな人柄や礼儀正しさ、真剣さなどは、新しい時代の武士道の格好良さを兼ね備え、そういったことも世界中のファンを魅了するのだと思います。これは、松山選手のマスターズ優勝の時のいい波紋にも繋がっていく話ですね。
“おぬし、できるな・・・”。
どんな時代でも、どんな環境、分野でも“随処の主”となって、その持ち場、役割を自分事として楽しみ、磨き、そこから放たれるエネルギー(光)で、自分も人も輝かせ合っていきたいものですね。人生の金メダルを目指して・・・。
合掌
Guts