あのつらい体験があったからこそ。
新米がおいしい季節になりました。
今年も友人であり、農の匠でもあります「長田竜太さん」が、精魂込めて作り上げた獲れたての「元氣米」を、あったかいみそ汁と一緒に、食べられるかと思うと今からワクワクします。
とてもシンプルな食事ですが、こんなに豊かでぜいたくな食は本当にありません。
今年、大学受験生の私の娘は、来年から一人暮らしを予定していますが、元氣米だけはちゃっかりと、毎月送って欲しいと今から催促するくらい、元氣米が大好きです。
好きなものを楽しみにして食べられるくらい幸せなことはありませんね。
思い起こせば、彼女が小さい頃は、アトピーで悩まされ、私も嫁さんも毎日、アワやヒエを食べたり、お肉や油物抜きの玄米、菜食を続けた時期がありました。
食べたい物が食べられないほど、つらいことはないと思います。
私は、まだ外食で好きなものが食べられましたが、彼女は本当につらかったと思います。
もちろん、夜中に体をかきむしってなかなか寝付けず、嫁さんも一緒にそのつらさと格闘していましたので、この時期は、本当に家族にとっても大変な時でもありました。
ただ、今から思うと、あのつらい体験があったからこそ、自然食の勉強をしたり、本当に安心で、安全な食材や商品を見抜く知恵や目を養えたり、食べ物が体質を作り、心や感情にまでも大きな影響を与え、身心の健康に大きく関与していることなどを知ることができました。
そしてこの15年位前の体験が、今の仕事にとても深く関係し、大いに役立っているのは紛れもない事実で、彼女のおかげでとても大切なことを学び、今の事業の骨格になるようなものを育ませてもらうことができました。
本当に人生って何が幸いするか分かりませんね。
感情的にも、社会的にも、精神的にも、自立した「自由な子供」へと成長。
そういえばもう一つ、彼女がチャレンジしたことから学び素晴らしいギフトとして私達が手にするものがありました。
実は彼女は、小学校5年の3月から、東京から6時間半かかる福井県の勝山市にある「かつやま子どもの村 小・中学校」という学校に編入しました。
そこにたどり着くまでの親子の葛藤も色々とありましたが、それらを乗り越えて勇気をもって親元を離れ、約4年間、国内留学のような形で、そのユニークな学校へ飛び立って行きました。
「自由な大人」の集う会社づくりは娘の選択とチャレンジのおかげ。
この学校は、時々テレビでも紹介される個性的な学校で、先生が手取り足取り教えることはせず、自分達で様々なことを選択し、決定していきます。
修学旅行では、自分達で行く場所や交通アクセス、手配を含め、自力で作り上げていきます。
そこで、社会の人と直接関わり、様々なことを体験を通じて学んでいきます。
ミーティングで、学校のルールを作ったり、変更するのも全員で真剣に話し合い、その際、先生も生徒も一票という平等さ、公平さを保ちながら、色々なことを決めていきます。
先生は、総称して「大人」と呼ばれ、どちらかというと、生徒のサポーター役に徹しています。
もちろん、5教科などの必須科目はありますが、授業の半分はプロジェクトという1年間を通じた、自分達が選択したテーマを小中学各々縦割りのクラスの子供たちが、お互い協力しあい、助け合ってその難題を成し遂げていきます。
例えば、「織物工房」というプロジェクトは、羊の子供を買いにいくところから始まり、それを育て、その飼育小屋も建て、病気にならないように食事も含めた様々な配慮をし、大きくしてから毛を刈り、その毛で編み物をして、セーターなどを作り、それを自分達でバザーなどを企画して売り、そのお金でカンボジアなどの水で困っている所に、井戸を掘るための寄付をし、さらに次なる生命を産み出すために、メスとオスの掛け合わせをさせて、子羊を産ませるなど、本当に凄いことを子供時分からやっているなぁ~と目が点となりました。
が、この中に保健、家庭科、生物学、数学、建築、栄養学などの学校教育に必要なことはもちろんの事、対外交渉やコミュニケーション、ビジネスやNPO的活動などの社会に出ても充分通用するような事を知らず知らずの内に体験学習し、身につけていきます。
そしてその過程で、様々な人とのつながりや友情、チームワークやコミュニケーションの大切さなどを学んでいきます。
大人が実社会に出てもなかなか出来なかったり身につけられないことを、彼女たちはごく自然に楽しんで身につけていきます。
そして、こういった自分達の自由意志で、物事を選び、決定し、実行していくことで、感情的にも、社会的にも、精神的にも自立した「自由な子供」へと成長していきます。
何か、私達大人がどこかで憧れ、追い求めているようなことを、この学校では育み、本当に子供達を「一人の人間」として、大切に育てています。
先生と生徒との関係もオープンでフラット、安心かつ親身になって関わってくれるため、心の支えとして卒業後もつながりが薄れない、深い信頼感があります。
クマが出るような山奥にある廃校を再利用した学校で、決して格好は良くありませんが、やっていることはとてもカッコよく、しかも自然がいっぱいの環境なので、自然から教えられることもたくさん学んでいます。
娘も、この学校に行ったことが、自分自身の大きな自信と土台になっていると誇らしげに言っています。
そんな学校へ彼女がチャレンジしてくれたおかげで、私達は、事業を経営しながら感情的にも、社会的にも、精神的にも自立した自由な大人の集う会社づくりを行なおうと思い、この数年取り組んできました。
自由で、温かで、親密で、活発なプロ・アクティブらしい文化や風土があるとしたら、そんな素敵な大人が集い支え合い、成長し合っている「空気」がそれらを育んでいるのだと思います。
大人でも、自分や仕事、会社に誇りを持てないでいることも多い昨今、彼女の学校からは本当にたくさんのことを間接的に教えられました。
娘の選択とチャレンジのおかげです。ありがたいことです。
今では、アトピーもすっかりなくなって、次なるユニークな大学へチャレンジしようとしている一人娘に最後にエールと感謝を込めて・・・。
「本当にたくさんのギフトをありがとう!」
いつも頑晴っている娘へ。
Guts