三浦光仁

  • 2011.01.01

これからの世の中に必要なもの

室町時代の昔より、七福神の乗った宝船にこのような回文を書き、 人々は良き初夢を見る準備をしたと言います。 ながきよの とをのねぶりの みなめざめ なみのりぶねの おとのよきかな 「長き夜の遠の眠りの皆目覚め波乗り船の音の良きかな」 私にとって長い眠りを覚ます、船の舳先が波をかき分ける音とは今、 この世の中に蔓延している機械音、デジタル音、直接音、指向性音、 雑音の中に生きながら、それをそれとして認 […]

  • 2010.12.01

クリスマスがやって来る

長い間、百貨店のバイヤーとして働いていたので、 (もう、10年も前の話ですが、やっぱり)この季節になると、 クリスマスソングが気になります。 もちろん、いまはもう12月なので、 クリスマスど真ん中!みたいな曲こそふさわしいのですが、 商業施設では11月の中旬からクリスマス・モードに入りますので、 そのくらいの時期からクリスマス・ソングが流れ始めます。 当時、私の周りで働いていた人々は、 あまりにも […]

  • 2010.11.01

青い宇宙

11月の空は高い。そう思いませんか。しかも澄んでいます。 私たちを取り巻く環境の中で(というほど大袈裟な言葉を使うまでもなく)、 一番の面積または容積を占めているものに、 神様はなんと美しい色を選んだことでしょう。 海も空も青。私たちはまさしく青に包まれて生きています。 さまざまな青のヴァリエーションの中でもひと際美しいのが、11月の空の色だと思います。 先ごろ、アメリカの天文学者たちが20光年離 […]

  • 2010.10.01

10月はたそがれの国

創元推理文庫は、その当時の私たちにとって、 ある意味、知的、冒険的、反逆的、ヴァガボンド的(放浪的)な 重要なステータスだったように思えます。 14歳くらいの少年にとって、それは未知の国への扉であり、 時を飛び越え、魔法の王国へ鍵であり、 その扉を、鍵をいくつ探し当てたか、持っているのか、知っているのか、 そんな自尊心を満足させてくれるバロメーターでもありました。 推理文庫というからには推理小説が […]

  • 2010.09.01

記憶のメカニズム

それはあまりにも遠い昔のこと。 もう思い出すこともない、些細な出来事。そんなささやかな思い出さえも、 一瞬にして鮮明に蘇ることがあります。 きっかけは様々ですが、「時代」を思い出させてくれるのは音楽、 その「とき」を思い出させてくれるのは「匂い」だと思います。 白い花の香りが私を30年以上も前の、夏の終わりのある宵へと引き戻しました。 すでに大学生になっていた仲間2人と予備校通いの私は、 いつもの […]

  • 2010.08.01

ヘミングウェイのパリ

「もしきみが幸運にも青年時代にパリで暮らすことができたなら、 その後の人生をどこで過ごそうともパリはきみについてまわる。 なぜならパリは移動祝祭日だからだ」 ヘミングウェイの言葉です。 パリジャンたちは8月のパリを気前よく観光客たちに明け渡します。 口うるさい、自慢げな住人達は避暑と言いながら、さらに熱い太陽を求めて南下して行きます。 夜の9時を過ぎても暗くならない、乾いた夏。 いま、パリにいると […]

  • 2010.07.01

砂漠へと導くもの

大学時代の友人から絵葉書が届きました。 暗がりの焚火の灯りにぼんやりと友人の顔が写っています。青いターバンを巻きつけて。 「何が、いったい、どうして!この年になって砂漠が俺を呼んでいる」 長年務めた会社を辞め、彼はアルジェリアの奥、サハラの真ん中にある壁画が有名な タッシェル・ナジェールにいました。 トゥアレグ族のガイドと共に野営する彼の瞳は砂漠の中の灯火に輝いていました。 私の中の砂漠のイメージ […]

  • 2010.06.01

6月の雨の匂い

雨が嫌い、なんて誰が言ったのでしょう。いいや、そんなこと誰も言っていませんよ。 もちろんさわやかに晴れた日は気持ちもカラっと冴えわたり爽快な気分になりますが、 静かに降り続ける雨の日は自分の中に広がっている小宇宙を覗くには とても良い機会だと思います。 雨の匂い、を感じてみましょう。 窓を開け、肺の形が分かるほど、深呼吸をしてみると、雨の匂いがします。 その日、その時、天から舞い降りてきた水という […]

  • 2010.05.01

5月の陽の下で

1年のうち、5月の後半くらいの季節が一番好きです。 ゴールデンウィークの賑やかな季節を過ぎて、少し世の中が落ち着きを取り戻し、 からりとした晴天が続くころ、人もまばらな海辺に向かいます。 波打ち際から少し離れた砂浜の上に緑色の布を敷いて、体を伸ばします。 傾斜した砂浜の上から波のブレイクを見ていると飽きません。 無数の波が5月の陽光に輝き、 それはまるで、永遠に終わらないフラッシュの洪水のように、 […]

  • 2010.04.01

パリ・コレに登場するスピーカー

ちょうど一年前、JETROの後援で、 パリのトレーディングフェア『メゾンエオブジェ』に参加しました。 インテリア、デザインに関するとても大規模なフェアで、 ミラノサローネに次ぐ規模だと思います。 会場全体の環境や、様々な要素もあって、その時はエムズシステムの 波動スピーカーを十分にアピールすることはできませんでしたが、 その期間中に在仏日本大使館公邸で行われたレセプションに 波動スピーカーを持ち込 […]

  • 2010.03.01

200年後のショパン

ショパンのアニヴァーサリー・イヤーである今年は 様々なコンサートでショパンが取り上げられる事になるでしょう。 今から24年前、2日間だけ、ワルシャワに行ったことがあります。 冬のさなか、とても寒く、暗く、街そのものがうつむいているように見えました。 いまはなきユーゴスラビアから、ポーランドに入ったのですが、 東欧とひとつの言葉で表すには、あまりにも印象が違っていました。 ワルシャワに入ると、まるで […]

  • 2010.02.01

ヒトに贈られた贈り物

ヴァレンタイン・デーが近付いてきます。 こんな風に女性が男性にチョコレートを贈るという習わしは 日本独特のものなのでしょうが、何かを誰かに贈る、というのは気持ちの良いものです。 もちろん、それがただの習わしであったりマーケティング上のことであったとしても、何かを誰かに贈る、ということは人間にとって一番素敵な行為だと思います。 今から30年ほど前からヒトゲノム計画という人間の遺伝子を読み解き明かし、 […]