博多の歴女●白駒妃登美の歴史ヒストリア
うちんTomodachi(私の親友たち)
第七話 戦国武将・木村重成に学ぶ(2)
本当に大切な存在を大切にするために、どうでもいいことはスルーする。
豊臣家臣団の中で、年は若くとも主君・秀頼の信頼が最も厚く、大坂城の女官たちにモテモテの木村重成。
城内の男たちは彼に嫉妬し、公衆の面前で侮辱する者まで現れました。
武士にとって、馬鹿にされ辱(はずかし)めを受けるということは、死ぬことよりもつらいもの。こういう場合、相手を殺し自分も死を選ぶというのが、武士の取るべき道と思われていました。
ところが、この時の重成の言動は、すべての者の予測を超え、あまりにも鮮やかでした。
「本来ならばお前を打ち捨てにするべきなのだろうが、そうすると私も死ななくてはならない。しかし、お前ごときのために、いま私が死ぬわけにはいかない。私の命は、秀頼様のためにこそ死ぬためにあるのだ。」
そう言って、笑顔さえ見せたそうです。
この一件で重成の覚悟を知った者たちは、みな重成に一目置くようになりました。
こうして名実ともに豊臣家の柱石の一人となった重成は、大坂の陣で大活躍し、家康を大いに苦しめます。
けれども、多勢(たぜい)に無勢(ぶぜい)、絶対的に不利な状況を覆(くつがえ)すことはできず、彼自身が望んだ通り、主君・秀頼のために存分に戦った後、壮絶な討死を遂げたのです。
大坂城が落城し、秀頼が自刃したのは、その数日後のことでした。
「私の命は、秀頼様のためにこそ死ぬためにある」そう思い定め、見事に本懐(ほんかい)を遂げた重成。
人の一生は、そんなに長くはない。
だとしたら、かけがえのない命を、誰のために、何のためにつかうのか?
どうでもいいことは、いちいち気にせず、スルーすることも大切だ・・・私は、重成がそう語りかけてくれているような気がします。
自分は、何のために生まれてきたのか、誰の笑顔が見たいのか・・・素直に自分と向き合えば、本当に大切な人、大切なものが見えてきます。
本当に大切な存在を大切にするために、どうでもいいことはスルーするというのも、大事なエッセンスなのかもしれませんね。