1年のうち、5月の後半くらいの季節が一番好きです。
ゴールデンウィークの賑やかな季節を過ぎて、少し世の中が落ち着きを取り戻し、
からりとした晴天が続くころ、人もまばらな海辺に向かいます。
波打ち際から少し離れた砂浜の上に緑色の布を敷いて、体を伸ばします。
傾斜した砂浜の上から波のブレイクを見ていると飽きません。
無数の波が5月の陽光に輝き、
それはまるで、永遠に終わらないフラッシュの洪水のように、光り続けます。
目の前に、人の考えを超越した光景が、当たり前のように連続して繰り広げられます。
手のひらに、浜辺の砂を掬い取ります。
何千という砂粒が、指の間からこぼれ落ちます。
この小さな塊は、この入江を象る岩を波が穿ち、
数万年、いや、もっと長い年月の経過の末の塊だということを、改めて感じます。
その途方もない時間の経過からか、強い陽射しからか、
少し、眩暈のような感覚にとらわれながら、ぼんやりと過ごします。
5月は新しい年度がスタートして、少し息をつけるいい季節です。
勢い込んで、頑張って、緊張してしまった肩の力を抜くのにいい季節です。
思ったよりうまくことが運ばなかったり、
周りの環境になじめそうもないなどと感じた時、
きらめく波を眺めたり、一握の砂に流れた時に意識を向けてみてください。
私たちを取り巻く自然には、こんな奇跡がいっぱい潜んでいます。
潜んでいるわけではなく溢れているのかも知れません。
ただそれに気づかぬまま、気づこうともせず日々を送ることはなんてもったいないことでしょう。
朝、家を出て、海辺で波を見て、風に吹かれ、
のんびりとランチをとり、夕方前に家路につきます。
そんな一日を過ごすと、何かに駆られて急いでいたこころが、
すっかりと落ち着き、いま、ここに生きていることに幸せを感じます。
Miura Music Collection 5月のおすすめ
ルイス・エサ
『再会』
≪ボサ・ノヴァ≫
そんな5月のさわやかな午後に聞きたい、
素晴らしいCDがあります。
ビル・エヴァンスが「彼が正しいコードを教えてくれたんだ」と言った彼とは、ルイス・エサ。
1曲目のドルフィンを流すと、輝く波間にドルフィンの背が見えるような、美しくも、瑞々しい、流麗なピアノの音色が溢れだします。