ヴァレンタイン・デーが近付いてきます。
こんな風に女性が男性にチョコレートを贈るという習わしは
日本独特のものなのでしょうが、何かを誰かに贈る、というのは気持ちの良いものです。
もちろん、それがただの習わしであったりマーケティング上のことであったとしても、何かを誰かに贈る、ということは人間にとって一番素敵な行為だと思います。
今から30年ほど前からヒトゲノム計画という人間の遺伝子を読み解き明かし、生命の謎を解明しようという壮大な計画が全世界的に敢行されたのですが、ヒトの持つ遺伝子は当初の予想の12万個よりはるかに少ない2万5千個くらいで、マウスとさほど変わりのないことが分かってしまいました。
ちょっと愉快ですよね。
この複雑で、最高に進化したはず(?)のヒトの遺伝子からは、その複雑さは少しも読み取れなかったわけです。
私たち人間は、日々の暮らしを営むためにそれぞれが職業に就き、何かの役割を果たしながら生きているのですが、どんな職業でも最初は、何か(思いついた素晴らしいものや考え出した素敵なサービス)を、誰か(家族や身の回りの人々)に贈るため、捧げるために活動し始めたはずです。
おいしいものを食べたり、面白い映画を観たりしたら、それをヒトに伝えずにはいられないのがヒトのヒトたる由縁でしょう。
それと同じように、何かを贈る、捧げる、というのはヒトが持っている本能的な行為、純粋に湧き出てくる気持ちだと思うのです。
それはヒトという種に贈られた、素敵な贈り物に違いありません。
きっとどこかの遺伝子にそっとひそんでいるのでしょう。
ところが、いつの間にかその想いは希薄になって、
何かを誰かに売ると利益が出て、貯えが増えるという循環に置き換わってしまったのが現代社会のようです。
経済活動や、文化的な活動でさえも他者・他社・他国との競争や戦争に準えてしまう時代ですが、私たちはもう一度、いま、行っている活動や、想いが、そして自分たちが担っている役割が一体どこからわき出てきたのかを問い直してみる必要があるのかも知れません。
甘さを控えることのない、とびきり甘いチョコレートを待ちわびながら、そんなことを考えています。
Miura Music Collection 2月のおすすめ
エディ・ヒギンズ&スコットハミルトン
『マイ・フーリッシュ・ハート』
≪ジャズ・ピアノ≫
どのくらいの甘さのチョコレートが届くのか分かりませんが、これだけ甘いテナーサックスの音色はそうそうありません。
エムズシステムの試聴ルームではビル・エヴァンスのピアノに よるアルバム「ワルツ・フォー・デビー」の第1曲目、「マイ・フーリッシュ・ハート」を聞いていただくのが通例になっていますが、今月のお薦めはエディ・ヒギンズ&スコット・ハミルトンによる『マイ・フーリッシュ・ハート』です。
出だしの1フレーズでクラっとくるような甘さをご堪能ください。