select2 | 一汁一菜でよいという提案

select2 | 一汁一菜でよいという提案

雑誌やYouTubeで本や著者の紹介を連載しているサトケンが、あなたの中にすでにあるものを思い出し、生きる歓びを見出す本とのご縁を繋ぎます。

select2
一汁一菜でよいという提案
土井 善晴(著)/新潮文庫

一汁一菜とは、日本人としての「生き方」

土井善晴さんというと、NHKなどでおなじみ、愛嬌があって面白い人くらいに思っていたのが、コロナ禍に出た『料理と利他』という政治学者の中島岳志さんとの対談本を読んでいたら、土井ワールドの広さと深さにシビれてどハマりしてしまい、土井という土井をむさぼるように読み漁って、あやうく一時はサトケンならぬドイケンでした(笑)。
ちょうど軌を一にして世間の土井評も高まり、様々なメディアで特集されたり、いろいろな学者さん達が絡みたがったり、映画『土を喰らう12ヵ月』の食事の監修を、畑作りからリアルに1年間されたりと、ありとあらゆる分野の方が土井さんに興味を持っているのは、食べることや料理することから始まり、暮らしの中にあらゆる知恵や感受性や哲学や宇宙があることを土井さんの見方や言葉から気づかされるからなんだと思います。

=一汁一菜とは、ただの『和食献立のすすめ』ではありません。一汁一菜という「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、日本人としての「生き方」だと思います=(本文より)

おいしい・まずいの区別やインスタ映えや料理屋のような品数から離れ、自然に対する感性、人間の作為的な知恵や力まかせでは実現できなかった日本の文化、身体の感覚、地球環境、世界平和、大自然の秩序、純粋であること、教育の本質、いのちのこと、人を幸せにする力は自らを幸せにする力にある、生きる判断基準、未来に贈るもの・・・などなどは、料理をすることで気づき、思い出すことができます。

「この本は、お料理を作るのが大変と感じている人に読んで欲しいのです」から本文が始まりますが、実際に読んでみると料理作っている人のみならず、ふだん料理をしない人やしたことがない人達でも、きっと義務的にではなく、料理から暮らしをもっと大切にしたくなってしまうに違いありません。

目で見て手で触れて料理することで、人間はその根本にあるものと直接つながることができるのです。~土井 善晴~

こちらもおすすめ

「料理と利他」
「ええかげん論」
土井 善晴(著)/中島岳志(著)
— MSLive!Books —

政治学者で歴史学者の中島岳志博士とのコロナ禍でのオンライン対談イベントの書き起こしと、その深化版続編。
土井さんに中島氏が質問しつつ、理解した内容を違う例えで表現したり広げたりしながら、両者がお互いの話をきっかけに起こる気づきや展開に、視野がドン!と広がることマチガイなし。
古今東西の哲学や政治、思想や神道・仏教・芸術などなど、縦横無尽に話が展開するも、決して難しくなく、会話調でわかりやすくグイグイ引き込まれます。
一汁一菜とは、手抜きやサボることのススメではなく、削ぎ落としてシンプルにすることで本質に迫り、その行為を通じて、人間と自然の関係を解きほぐしてつむぎ直すこと、「ふつうであること」の偉大さなど、人間の歴史を繋げてきた多くの庶民や宇宙の叡智が二人の対談を通して読む人に優しく伝わっていく2冊です。

人にキク、地球にキク本カテゴリの最新記事