select11|どのページを開いて読み始めても 楽しいかけ合い

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雑誌やYouTubeで本や著者の紹介を連載しているサトケンが、あなたの中にすでにあるものを思い出し、生きる歓びを見出す本とのご縁を繋ぎます。

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『かっぱ語録』
谷川 俊太郎(著)/覚 和歌子(著)
<角川春樹事務所>

谷川 俊太郎(著)/覚 和歌子(著) 『かっぱ語録』

どのページを開いて読み始めても楽しいかけ合い

昨年11月、詩人の谷川俊太郎さんが92歳で永眠されました。
その年の5月に出版されたこの本は、『千と千尋の神隠し』の主題歌の「いつも何度でも」の作詞でお馴染みの覚和歌子さんとの共著で、谷川さんの今までの著作から抜き出した言葉をきっかけに、覚さんが言葉を紡いでいくのが各1ページずつ、見開きで完結する構成になっています。

谷川さんの言葉は、平易な表現でハッとするような内容に踏み込んだり、思わずくすっと笑ってしまうような愛らしい表現が多く、真剣であっても深刻さや言葉にとげを感じないのがボクは好きです。多くの人に愛された詩人というイメージだけれども、それは谷川さん個人の独特の世界に思わず浸ってしまうのではなくて、「詩を書くには、自我がないっていうことが、ひとつの条件としてあるんだと、思ってます。自分を空っぽにして言葉を呼び込むのが私の書き方だというふうに思ってる。」(本文より)と、ご本人がおっしゃるように、自我からではなく、深い集合的無意識のような場所から言葉を汲み上げるように書いているのが、きっと万人から共感を得ている理由なんでしょう。

また、谷川さんの言葉を受け取って繰り出す覚さんの表現も、自ら「スピリチュアリスト」と名乗っているだけあって、谷川さんがあとがきで「覚さんは〝巫女〟だから、もしかすると私を憑依させて書いたのかもしれない。」と書いているように、谷川さんの言葉に迎合するわけでもなく、意図を解釈するわけでもなく、この見開き2ページで、まさに読者の目が見開かれるような、さらに視点が広がり気づきが広がるような、濃厚な読後感に浸ることができました。

「ゼロ」になったからだで、死んでいく不思議を味わった谷川さんは、きっと彼岸で、また新たな一篇を書き続けていることでしょう。

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