「自炊料理家」

「自炊料理家」

ほっとメッセージ

「今、とても気になる人の一人なの」。巡り巡った不思議なご縁

こんにちは。
お元気でいらっしゃいますか?

桜が咲き誇り、新芽も芽吹く春、4月。
新入学、新入社、新学期、新天地など、新しいステージでの新たなご縁が広がる時節。人生の化学変化が起こりやすい月かもしれません。
そういえば私事で恐縮ですが、娘の祐加が、人生の先輩であり、師でもある小倉ヒラクさんと出会ったのは、一年前のちょうど今頃、この芽吹きの時期でした。昨年5月のこの誌面で、娘が大好きな料理の分野で起業するに至ったプロセスをお伝えさせていただきましたが、あれから1年。彼女は“自炊料理家”という世の中にない新しい肩書、職業を見つけ出し、3月には「週3レシピ 家ごはんはこれくらいがちょうどいい(実業之日本社)」という本も出版しました。それもすべて、1年前のヒラクさんとの出会いから始まったと言って過言ではないと思います。その出会いのきっかけは、娘がある講演会に行って、とても内容が面白かったので最後に質問をしたら、とてもユニークな答えが返ってきて感動したという話を私にしてくれたことでした。私が「それは良かったなぁ~。ところで誰の講演やったん?」と尋ねると、「小倉ヒラクさんという人。今、私の中ではとても気になる人の一人なの」と答えが返ってきました。「えっ、それヒラクちゃんやん。お父さん、よく知ってる人やで。ビックリしたぁ~」。
実は6年ほど前、私達の会社でも小倉ヒラクさんと一緒に仕事をする機会があったのです。『結(ゆい)』という糀ドリンクを開発した時に販促企画に携わってもらいました。
当時は20代後半のアート&プロモーションディレクターで、その目のつけ所や発想、思考の深さや知恵にはビックリするような個性と才能を感じていましたが、今や “発酵デザイナー”という肩書きで、日本中いや世界中の発酵に関わる人達に引っ張りだこの人だといいます。「ヒラクちゃん、その道を極めたか~。彼らしいなぁ」。
娘の話にそう答えながら、私は嬉しさと、巡り巡った不思議なご縁を感じて、久々にヒラクさんに電話してみると、講演のユニークな質問者が私の娘であったことにヒラクさんも感動され、3人で再会することになりました。
そこでは、お互いの近況を語り、旧交を温めながら、話題は娘の話になっていきました。「祐加さんは、今どんな仕事をしていて、これから先、どんな仕事を中心にしていきたいのかな?」とヒラクさんが尋ねると、娘は「今は料理雑誌やウェブメディアでユニークなお店を紹介したり、食のイベントの企画をしたり、出張社食のようなサービスを始めたりと、いろいろなことに興味があって。でも一番やりたいことは、自炊する人を増やして、料理をつくることの楽しさと、その料理を美味しく豊かに味わえる喜びを共有できる機会や場をつくっていきたいんです」と、素直に、目を輝かせながら話しました。

大好きなこと、本当にやりたいことに一点集中して、 絞り込んだから、今の僕があるんだと思う。

祐加さん、それなら自炊料理一本に絞った方がいいよ!他のことは祐加さんじゃなくてもできるけど、自炊する人を増やすというミッションはとても素敵だし、きっと祐加さんから学びたい、教えてもらいたいという人はいっぱいいるはず。僕なんか、いろいろな会社の商品企画やアートディレクターなど、本当に様々なことをやっていたけど、ある時このままでいいのか?と考えて、素の自分とじっくり向き合ってみたんだ。もともと身体が弱くて、発酵食を食べ始めたらすこぶる体調が良くなって、発酵の魅力にはまって深堀りし始めた。発酵の魅力を多くの人がまだ気づいていないから、それを広めたくて、他はすべてやめてしまったよ。とても勇気がいることだったけれど、そう決めるともう迷わない。東京農大の醸造科の研究生になって、発酵学を一から学び直して、自分の血肉にしていこうとどんどん探求していった。デザインで創業した東京の会社を離れて、微生物を育てるのに適した山梨の山の中に移住したのもこの頃。そして、そこで知り合った『五味醤油』さんの兄弟との出会いが私の人生を大きく変えてくれたんだ。大好きな微生物と対話しながら仮説、検証して、わかったことを様々な地域や国の発酵事情とつなげ、整理しながら、発酵文化をデザインし、伝道していく・・・。これが僕の今のミッションだけど、それもこれも大好きなこと、本当にやりたいことに一点集中して、絞り込んだから、今の僕があるんだと思う。だから祐加さんも、自炊料理一本に絞って懸けてみてください」。

自炊レッスンワークショップにて 中央/山口祐加

決意から1年。「自炊料理家」という肩書きに ふさわしい自分になっていっています。

もう、その何ともいえない究極のアドバイスに、娘は胸のつかえがとれたかのようにスッキリして、「ヒラクさん、私、自炊料理一本で頑張ってみます。何か凄い勇気をもらいました。ありがとうございました!」と本当に嬉しそうに感謝の気持ちを伝えていました。
「ヒラクちゃん、ありがとう。凄い背中を押してくれたわぁ。ホンマにありがとう」と私が言うと、「ガッツさん、祐加さんのやる自炊料理は当たり前すぎて誰もが見落としている、競合する人がいない分野です。ありきたりのレシピ本やインスタ映えする料理法が多い中、肩肘張らず、旬の食材で、健康的に経済的にサッとできる料理の仕方、考え方を親しみやすく教えてくれる人がいれば、今の時代、学びたい人はいっぱいいますよ。だから集中して自然体で発信すれば、僕がそうであったように、見つけてくれる人は必ずいます。きっとうまくいきますよ!」
そんな値千金のアドバイスを心の糧に、彼女はこの一年、密度の濃い自炊レッスンのワークショップを月に何度も開催していきました。そしてそこに集った様々な自炊の悩みや関心を持った方々と一緒になってそのワークショップを磨き、気づいたり考えついたことをSNSなどで発信し続けた結果、有り得ないご縁がご縁を生んで、起業して一年も経たないうちに、自炊レッスンの自宅実践本としての「週3レシピ」という本が出版されるまでに至りました。

週3レシピ 山口祐加著 実業之日本社

私にも信じられないような展開やご縁が広がっています。恐るべし、ヒラクマジックです。
そしてヒラクさんが、“発酵デザイナー”という肩書きで名が知られるようになったのと同じく、彼女も“自炊料理家”という肩書きにふさわしい自分になっていっています。
娘を見ていて、等身大の豊かさや楽しさ、幸せを時代が求めていることを実感します。そういったことを伝え、教え、一緒になって成長できる肩書き、新しい職業が出てきても不思議じゃないですね。

感謝

Guts

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