恐るべし。
時代も世代も国境も超えて、一人一人の思い出と共に。
こんにちは。
お元気でいらっしゃいますか?
先少し前の話になりますが、今年の夏に、私と嫁さんと、今年京都の会社に就職して離れて暮らす一人娘と、三人で旅行した時の話です。
久しぶりの家族旅行で、レンタカーを借りてドライブをしていました。
50代の私達にとって、夏といえばBGMは山下達郎で、真っ青な空、コバルトブルーの海には「RIDE ON TIME」「Let’s Dance Baby」がぴったり。
嫁さんと私が車の中で達郎の曲を流し、口ずさんでいると、23歳の娘が「山下達郎ってすごいいい曲ばっかりだね。何かスカッとするし、ワクワクするし、気持ちいいね。すごい好きになったわぁ」。
それからその家族旅行中はずっと、娘も一緒に達郎のヒットメロディーを大声を出しながら口すさんでいました。
おかげでとっても思い出深く、幸せな旅になりました。
そしてその旅から1ヶ月も経たない間に、娘からメールが届き、「年内から年始にかけて達郎のコンサートがあるから、一緒に行かない?」という嬉しいお誘いがありました。
もちろん、私も嫁さんも二つ返事で「OK」でしたが、二人で「恐るべし山下達郎やね。世代を越えていいものはいいと感化され、こうやって人気が枯れずに受け継がれていくのは、本当にすごいことやね」と感動していました。
「達郎の曲を聴くと、何か元気になり嬉しくなる。心だけは一瞬で若返り、お父さんの大学時代の懐かしい青春の思い出が蘇ってくるねぇ・・・」そう私が娘につぶやくと、「歌詞もメロディーもテンポも、今聴いてもすごいし、竹内まりやのダンナさんと聞いて、また感動したわぁ~」と娘がしきりに感心していたのが思い出されます。
親子二世代に渡って同じ曲を聴き、一緒に口ずさみながら、旅行やコンサートなど共通の思い出をつくれる・・・。
山下達郎という一流のアーティスト(芸術家)であり、天才的なミュージシャンが織り成す世界観に共感した人は、時代も世代も国境も越えて、一人一人の思い出と共にずっと彼を支持し続けていく。
そして、その期待に精一杯応えようとして、彼もまた進化・成長しながら、その時々に素晴らしいメロディーを贈り届ける努力を怠らない・・・。
「素晴らしいファンがいるから、アーティストが育ち、さらに素晴らしい芸術作品を生み出していく。
その感謝、感動、歓び、承認、共感などの“エネルギー交換の場”がコンサートである」。
そんなことをシンガーソングライターの浜田省吾さんが言っていましたが、ミュージシャンがライブやコンサート、芸人が高座や劇場、役者が舞台を大切にするのは、やはりそこに生命と生命のやりとりがあり、心が歓び、魂が震え、言葉を越えた共通の感動や体験が生まれるから、また行きたくなるし、やりたくなるんでしょうね。
また行きたくなる場所。もう一度見たくなる作品。
キャンパスに託された、魂が震える美的感動の瞬間。
さて、話は少し変わりますが、別の世界でまた行きたくなる場所を最近見つけました。
そこは、嫁さんと二人で時々行く軽井沢にありました。
その日は雨だったので、普段行かない美術館へ行くことになりました。
偶然入った美術館、そこは世界的に有名な日本画家の千住博さんの美術館でした。
何となく聞いたことがあるお名前でしたが、まったく予備知識の無いまま、中に入った瞬間から私は一つ一つの絵に釘づけになりました。
多くは「滝」をモチーフに描かれた作品ですが、一つ一つに額縁はなく、圧倒的なスケールと臨場感で、ただただ立ち尽くすばかりでした。
約20年前、千住さんはそれまでモチーフにしていた野生のシカを追いかけ、ハワイの原生林の奥地へヘリを飛ばしていました。
悪戦苦闘の末に、最高のモチーフになる一頭のシカに近づき、カメラのシャッターを切り続けていると、そのシカはスッ~と姿を消し、追った先に劇的に現れたのは、轟音と共に白く輝く「滝」だったのだそうです。
千住さんはそれ以来、その時の滝のイメージが鮮烈に脳裏に焼きつき、あの滝を描かずにおけない・・・という強烈な使命のようなものを感じられ、再度ハワイを訪れ、無我夢中でスケッチされました。
この美的感覚を何としても心と身体に刻み込みたい、ただその一念しかありませんでした。
滝と同化し、その感動をストレートにぶつけ、形にしたい・・・。
それから数週間は何かにとり憑かれたように、アトリエで鬼気迫る試行錯誤をされていかれました。
大きな大きなキャンパスに、絵の具を瓶を入れて上から下に流してみたり、バケツに入った絵の具を画面に浴びせかけたり、噴射機に絵の具を入れて吹き付けてみたりなど、そこには本当に壮絶な絵の具とキャンパスとの格闘がありました。
そしてある時、絵の具そのものが「滝」と化した、まさに絵の具による“滝の出現”にようやく出会うことができたのです。
それは、魂がふるえる感動的な瞬間であったのはいうまでもありません。
それ以来、千住博さんといえば、躍動的かつ幽玄、リアルな究極の滝を描く作家として、その名を世界に轟かせることになりました。
芸術に感動するということは、
何とかして伝えたいとする心意気に対する感動。
彼の作品の前に立つと、本物の滝の轟音や水しぶき、その背後に浮かび上がる微細な水泡の波紋や水の光などが、まさに迫りくるように感じられます。
これこそ彼が一番初めに見た、例えようもない美的感動そのものだったんですね。
そしてその感動は、私達に「もう一度ここへ来たい、また作品を見たい」という突き動かすかのような、言葉を超えた何かを与えてきます。
そんな千住さんが芸術について語られています。
「芸術とは、コミュニケーションであり、なんとかして自分の思いを伝えたいという心の表れです。
突き詰めれば、芸術に感動するということは、その何とかして伝えたいとする心意気に対する感動なんです」と。
それは山下達郎さんの音楽も、文化祭で無我夢中で子供達が演じるお芝居も、家族のために腕によりをかけて作るお母さんの手料理も、実は一緒なんだと千住さんは教えてくれています。
私達も『月のしずく』『竹布』『石田屋さんの布団』など芸術作品のような商品を通じて「本物の水のすごさ」「竹繊維の心地良さ」「究極の眠り」を心から伝えたいと思います。
芸術の秋、そして11月は「文化の日」。さらに、一人一人が精魂込めた仕事を働く者同志が労い、感謝し合う「勤労感謝の月」。
一人一人がアーティストであり、一人一人が誰かのファン。
みんなの芸術性と勤労に乾杯!
Guts