長田竜太のお米の話 第九話
同じ轍(てつ)を踏む
〜 TPP妥協でお米は? 〜
ようやくTPPが妥結しました。
12カ国もの国々が国益を考えぬいて決めた国際ルール。
TPPというと手前ども農業界ではアレルギー反応を起こす人が多いことも皆さんご承知のことでしょう。
TPPは基本的には聖域無き関税撤廃というお題目が掲げられていますので、安い農産物が輸入され、農業が壊滅的被害を受けると農家が大騒ぎしている光景をよくテレビで見かけます。
ではお米は今回妥結したTPPによってどうなるのか、皆さまにはきちんと知っておいて頂くために書いております。
まず、農産物の関税率を踏まえて話を進めたいと思います。
例えばレタス、トマトなどサラダでよく使う野菜は現在でも関税率3%ですので、ほとんど影響はありません。
他の農産物も10%前後のものが多く、これもさほど影響がないと思います。
飛び抜けて関税が高いのが778%のお米です。
つまりタダで輸入したお米でも10kg/3410円の関税がかかるという凄まじい関税率です。
今回この関税が撤廃されるのかと思いきや、やはり聖域としてお米の778%は温存されることになりました。
代わりに、ミニマムアクセスと呼ばれる義務的に無関税で輸入しなければならない米を毎年7万トン入れる条件を受け入れました。
ただ現在すでに年間77万トン程のミニマムアクセス米を輸入しています。
これは1993年のウルグアイラウンドで合意したもので、日本はこの時もコメの関税化を遅らせる代わりに、一定数量を無関税で輸入することについて受け入れたわけです。
無関税で輸入された米を主食用として流通させると価格が暴落し、農家の生活に打撃を与えるため、政府は買い取った米を発展途上国支援や家畜のエサなどに使い、政府は損失補填しています。
1995年〜2013年までの累積損失額は2700億円(当初の新国立競技場建設費)に達します。
つまり米はTPP妥結でも、これまでと何も変わらないのです。
1993年にはウルグアイラウンド農業対策予算といって6兆円という莫大な農業予算を使い果たしました。
結果現状は何も変わりません。
たぶん今回もTPP農業対策費といって莫大な農業予算がばらまかれる可能性が大きいのです。
守るべきものは農家の生活ではなく、食や環境を担う農業そのものだと思います。